多様な響きが現出する稀有の意欲的プログラム
読売日本交響楽団の2月定期は、首席客演指揮者コルネリウス・マイスターが登場。刺激的なプログラムを披露する。ドイツ生まれの彼は、ウィーン放送響の首席指揮者兼芸術監督を経て、シュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督を務める気鋭の実力者。2017年現ポストに就任した読響では、ストレートな表現の中にもコクのある演奏を聴かせ、特に18年6月のR.シュトラウス・プロでは、オペラの比較的レアな管弦楽版などでゴージャスかつ生気漲る快演を展開した。それだけに今回の凝った演目への期待も大きい。
1曲目はスイスの現代作曲家ヘフティの「変化」(日本初演)。2011年作のこの曲は、多彩な音響が交錯する約15分の鮮烈な音楽で、生演奏が耳目ともに楽しみだ。続いてのベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」は、アルマ・マーラーの急逝した娘マノンに捧げると同時に、自身のレクイエムを予感した音楽で、浄化されたトーンが胸に染みる。独奏はドイツが生んだ現代屈指のヴァイオリニスト、クリスティアン・テツラフ。シャープかつ迫真的な表現で魅了し、本作も得意としている彼の演奏は必聴だ。後半はブルックナーの交響曲第2番(ノヴァーク版)。滅多に演奏されない曲だが、後の名曲のスタイルを最初に示した重要作で、中でも緩徐楽章はすこぶる美しい。ここはマイスターの王道アプローチと、幾多の名匠のもとで積み重ねてきた読響一流のブルックナー・サウンドが融合した、日本では稀な第2番の真髄体験が実現するに違いない。本公演は、3曲いずれもライヴ演奏に接してみたい、興味津々のコンサートだ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年1月号より)
*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は中止となりました。(2/27主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
第595回 定期演奏会
2020.2/28(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp