イタリアのバロック時代の作品に新たな命を吹き込んだグループ、イル・ジャルディーノ・アルモニコと指揮者ジョヴァンニ・アントニーニ。その活動の領域はさらに広がっており、特にハイドンの交響曲のディスクでは目覚ましい成果をあげている。録音を通して聴く彼らのハイドンは、いわゆる「パパ・ハイドン」と呼ばれる古典派の典型としての枠を超えないこれまでの穏健な演奏とは違い、その音楽のなかに秘められている驚くべきエネルギーや豊かな感情表現をたっぷりと詰め込んだものとなっている。これをライブで聴きたいと思っていた方も多いのではないだろうか?
今回はイザベル・ファウストとのツアーの間に、彼らだけの特別なコンサートが開催されるが、そこで待望のハイドン交響曲の新しい世界が展開される。演奏されるのは、交響曲第52番 ハ短調と交響曲第44番 ホ短調「悲しみ」の2曲。さらにモーツァルトのディヴェルティメント K.136を前半に、アルヴォ・ペルトの「主よ、平和を与えたまえ」、ザムエル・シャイト(16〜17世紀のドイツで活躍)の「4声の悲しみのパヴァーヌ イ短調」を後半に並べる。モーツァルト以外はヨーロッパで展開中の彼らのコンサートのプログラムだそうで、現在進行形の彼らの活動を知る上でも興味深い公演となる。アルモニコ(調和)なき今の世界に、18世紀の音楽がどう響くのか? 彼らの演奏を通して、そんなことも考えながら聴いてみたい。
文:片桐卓也
ジョヴァンニ・アントニーニ(指揮) イル・ジャルディーノ・アルモニコ
《Trauer ―悲しみ―》
2024.12/13(金)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com