ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場 オペラ《魔笛》《フィガロの結婚》&「レクイエム」

モーツァルトの全オペラをレパートリーとする世界唯一の歌劇場、待望の来日

精度の高いアンサンブルとシンプルで上質な演出が魅力の《魔笛》と《フィガロ》

 今回はまず、モーツァルトのオペラ《魔笛》と《フィガロの結婚》が上演され、21の全モーツァルト・オペラを恒常的に上演できる世界で唯一の団体の真価が発揮される。ポーランド国立ワルシャワ室内歌劇場の一番の特徴は、演出過剰なオペラとは違って音楽自体を楽しませるシンプルな舞台。しかも古典の研究でも評価の高い劇場だけあって、作品のポイントが的確に押さえられている。劇場所属の旬の歌い手たちが並ぶソリスト陣も高いレベルで粒が揃っているし、常日頃から共演を続けているがゆえにアンサンブルのバランスが絶妙だ。指揮者とオーケストラも実力十分でサウンドは美しく、演奏はツボを外さない。加えて今回は初めて古楽器も使用するとのことなので、清新な響きも楽しめる。指揮は《フィガロの結婚》をピョートル・スワコフスキ、《魔笛》をマルチン・ソンポリンスキが務める。歌手は劇場専属のイングリダ・ガポヴァ(ソプラノ)、イヴォナ・ソボトカ(同)、アルトゥル・ヤンダ(バリトン)らが出演する予定だ。

 《フィガロの結婚》は、フィガロとスザンナが結婚する日に起きる目まぐるしい出来事を描いた、オペラ・ブッファの最高傑作。11人もの登場人物が絡み合っての恋や悩みや策略が、軽妙かつ奥深い音楽とともに展開される。〈もう飛ぶまいぞこの蝶々〉〈恋とはどんなものかしら〉をはじめ、単独で歌われる有名アリアも10曲近くあるし、特にこの公演では前述した通り、同劇場の歌手陣のアンサンブルが聴きものだ。

《フィガロの結婚》

 《魔笛》は、モーツァルトが最晩年に残した18世紀ドイツ語オペラの最高峰。メルヘンの世界とフリーメイソンの世界が入り混じった不思議な物語ながら、音楽は全編がチャーミングというほかない。超高音で有名な夜の女王のアリア(同劇場の歌手はこれも鮮やかに歌う)をはじめ、こちらも名曲が目白押し。さらにこの舞台は、ザラストロの神殿の3つの扉や夜の女王に仕える3人の侍女の描き分けなど、効果的な色使いが見ものでもある。

《魔笛》

モーツァルト「レクイエム」公演にも期待

 今回はもう1つ、モーツァルトの「レクイエム」を中心としたコンサートが開催される。これは、第1部に《フィガロの結婚》の序曲、二重唱2曲、三重唱、《ドン・ジョヴァンニ》の二重唱2曲、《魔笛》の二重唱2曲が並び、後半に「レクイエム」が置かれたガラ・コンサート。指揮は、今回《魔笛》でもタクトを執るソンポリンスキ。ドイツで研鑽を積んだ後、ポズナン歌劇場などで活躍してきた名匠だ。

「レクイエム」

 前半にアリアではなく重唱が並んでいるのは、同劇場の特長を示す好プログラミング。そもそもモーツァルトのオペラは、生き生きとしたアンサンブルが大きな魅力だし、ここでは、所属歌手たちの息の合ったやりとり、濃密かつ精妙な重唱を満喫できる。後半の「レクイエム」は言わずと知れた遺作にして、ヴェルディ、フォーレの各作と並んで同ジャンルのトップに位置する名作。同劇場は毎年開催している「モーツァルト・フェスティバル」でもこの曲を重視しているし、やはりアンサンブルが肝となる音楽だけに、これまた本領が発揮される。むろん舞台に乗った同劇場自慢の合唱とオーケストラをリアルに体感できるのも貴重。死の淵に立つ天才が最後の力を込めて書いた清澄かつ劇的なドラマを、モーツァルト作品への敬意と共感に満ちた同劇場のアーティストたちの渾身の演奏で堪能したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年11月号より)

「レクイエム」
2019.11/6(水)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール

《魔笛》
2019.11/9(土)13:00 17:30 東京文化会館

《フィガロの結婚》
2019.11/10(日)14:00 東京文化会館
11/4(月・休)15:00 神奈川県民ホール
11/7(木)18:30 オリンパスホール八王子

問:光藍社チケットセンター050-3776-6184 
https://www.koransha.com/
※全国公演の詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

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