清水和音(ピアノ) “魅惑のラフマニノフ”

抒情と男性的なピアニズムを堪能

©Mana Miki

 スケールの大きさと高い演奏技術を兼ね備えた清水和音のピアノを存分に味わえる、オール・ラフマニノフ・プログラムによるコンサートが行われる。共演は東京フィルハーモニー交響楽団、同楽団のレジデント・コンダクターであり、ピアニストとしての実力も高い渡邊一正。

 公演は、ラフマニノフが20歳の若さで書いた幻想曲「岩」で幕をあける。続けて演奏されるのは、さらに若き日に音楽院の卒業試験のために書かれ、作品番号1がつけられているピアノ協奏曲第1番。作曲家として注目されるきっかけとなったこの作品は、2番、3番に比べると演奏機会は少ないが、ラフマニノフらしい、エネルギッシュで輝かしいピアノ音楽の魅力を味わうことができる。

 そして、甘美で哀愁に満ちた音楽が流れる名曲中の名曲、ピアノ協奏曲第2番。美しいピアニッシモから力強く重い音まで、その卓越した技術で現代ピアノの表現をすみずみまで引き出す清水が、ピアニスティックな魅力溢れる作品で起伏に富んだドラマを描いてくれることだろう。

 清水和音の演奏会では、聴き慣れた作品からも、いつも新しい発見を受け取ることができる。今回はオーケストラとの掛け合いの中で、どんなふうにロシア音楽の雄壮な世界を再現してくれるだろうか。持ち前の力強く男性的なピアノの表現をラフマニノフの音楽で堪能する、またとない機会となりそうだ。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2019年11月号より)

2019.11/3(日・祝)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:サンライズプロモーション東京0570-00-3337 
https://sunrisetokyo.com/