第23回 京都の秋 音楽祭

古都が音楽とともに最も輝く季節を体感


 紅葉が日々、彩りと輝きを纏ってゆく古都を舞台に、芳しいハーモニーを味わう「京都の秋 音楽祭」。23回目となる今年は、9月15日から11月23日まで開催される。国内外の第一線で活躍する名手たちが集い、様々な編成でバラエティ豊かなプログラムを披露。音楽の奥深さが堪能できるだろう。1年のうちで、最も輝く京都の街とともに、響きの宇宙を体感したい。

 「京都の秋」の幕開けを告げるのは、地元が誇る京都市交響楽団による「開会記念コンサート」。今年は名匠・飯守泰次郎のタクトにより、日本を代表するソプラノの森麻季を迎えて、ビゼー《カルメン》やプッチーニ《ラ・ボエーム》などから、名アリアの数々を。さらに、飯守が得意とするワーグナー《ニーベルングの指環》から、管弦楽版による抜粋を披露する(9/15)。

14年ぶりの“フィラデルフィア・サウンド”

 そして例年、音楽祭の目玉の一つとなっているのが、世界各地から名門オーケストラを招いてのステージ。今年は、「アメリカ・ビッグ5」の一角を占めるフィラデルフィア管弦楽団が、音楽監督のヤニック・ネゼ=セガンに率いられて登場する。1900年の創設以来、輝かしい“フィラデルフィア・サウンド”で、世界中の聴衆を魅了してきた精鋭集団。ネゼ=セガンのシェフ就任から7年を経て、伝統的なサウンドを堅持する一方、いっそうの表現力と機動性を兼ね備え、新たな時代を迎えている。

 実に14年ぶりの京都公演となる今回は、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」をメインに。誰もが知る“名曲中の名曲”だけに、知将の音楽創りと名門楽団のサウンドの個性が、逆に際立つだろう。さらに、10年前にヴァン・クライバーン国際コンクールの史上最年少の覇者となった中国出身の国際派ピアニスト、ハオチェン・チャンがソリストとして登場。ラフマニノフの協奏曲第2番を、繊細かつ大胆な音楽性、鉄壁のテクニックで聴かせる(11/3)。

フレッシュなアーティストたちの才能に触れる

 若い才能の瑞々しい音楽に多く触れることができるのも、この音楽祭の大きな特色だ。関西の8つの音楽大学の学生による第9回「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル」は、昨年に続いて秋山和慶の指揮により、サン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付」や、やはり学生ソリストや合唱が加わってのモーツァルト「戴冠式ミサ曲」ほかを上演する(9/16)。

 また、京都コンサートホール開館2年目から続く人気シリーズ「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」には、3年前のライプツィヒ・バッハ国際コンクールを制した俊英、冨田一樹が登場。バッハの傑作はもちろん、ホールに設置された楽器の特性に合わせて、レーガーなどロマン派の作品や即興演奏も披露する(9/28)。

 さらに、ポーランド国立ショパン研究所が昨年創設した「ショパン国際ピリオド楽器コンクール」で2位入賞を果たした川口成彦が、プレイエルのピアノで弾くオール・ショパン・プロも(10/5 完売)。また、名手ひしめく日本人若手ピアニストの中で、ひときわ注目を集める北村朋幹は、ヴァイオリン山根一仁ら国内のトップ奏者たちで構成された「エール弦楽四重奏団」と共演。「フォーレに捧ぐ」と題し、ピアノ五重奏曲第1番・第2番やシェーンベルク(ウェーベルン編)の室内交響曲第1番をとりあげる(11/10)。

ラストには京響とスウェーデン放送合唱団が登場

 そして、音楽祭の掉尾を飾るのは、京都市交響楽団が常任指揮者兼ミュージック・アドヴァイザーの広上淳一のタクトのもと、世界最高峰の声楽集団、スウェーデン放送合唱団と初共演する「京響スーパーコンサート」。ソプラノのシルヴィア・シュヴァルツら第一線のソリストをまじえて、絶筆「レクイエム」をはじめ交響曲第25番、歌劇《皇帝ティートの慈悲》序曲と、オール・モーツァルト・プロで締め括る(11/23)。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年9月号より)

2019.9/15(日)〜11/23(土・祝) 京都コンサートホール
問:京都コンサートホール075-711-3231 
https://www.kyotoconcerthall.org/