ピエタリ・インキネン(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

バイロイト《リング》を振るインキネンがベートーヴェン・ツィクルスを始動


 フィンランド出身のマエストロ、ピエタリ・インキネンは、まだ30歳代の若さながら、日本フィル、プラハ響、ドイツ放送フィルのシェフを兼務する、最も多忙な指揮者の一人である。この4月には日本フィルのヨーロッパ演奏旅行を成功に導いた。また、2020年には、バイロイト音楽祭の《ニーベルングの指環》(全曲)の指揮も担い、ますます世界的に注目されている。

 ワーグナー、マーラー、ブルックナーなど独墺音楽での評価を高めているインキネンが、20年のベートーヴェン生誕250年を祝して、この秋から日本フィルとのベートーヴェン交響曲ツィクルスをスタートさせる。その第1弾として10月の東京定期演奏会で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番と交響曲第3番「英雄」を取り上げる。ピアノ協奏曲の独奏を務めるのは、ロシア出身のアレクセイ・ヴォロディン。ほぼ同世代で、ヨーロッパでも共演を重ねている二人だけに、息の合った演奏が聴けるに違いない。「英雄交響曲」ではインキネン&日本フィルが若きベートーヴェンの情熱を蘇らせる。また、このツィクルスで、インキネンは、最初にチェコの比較的珍しい作品を紹介する。彼は、15年からプラハ響の首席指揮者を務め、チェコ音楽に積極的に取り組んでいるのだが、今回はドヴォルザークの歌劇《アルミダ》序曲というもの。ドヴォルザークの最晩年の作品でありながら、ほとんど上演される機会のないオペラのために書かれた序曲を聴く、貴重な機会となる。
文:山田治生
(ぶらあぼ2019年9月号より)

第714回 東京定期演奏会
2019.10/18(金)19:00、10/19(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://www.japanphil.or.jp/