“歴史的企画”と共に新コンマスが活動開始!
日本フィル・シリーズは、今年生誕100年を迎えた同フィル創立指揮者・渡邉曉雄が約60年前に創設した日本人作曲家への管弦楽曲委嘱・初演企画。戦後作曲界の屋台骨を作ってきた名作の山脈に、正指揮者・山田和樹のタクトのもと、42作目となる新作が3年ぶりに加わる。起用されたのはテレビや映画音楽でおなじみの大島ミチル。数々の映像を美しく彩ってきたベテランが、オーケストラのキャンバスいっぱいに雄大な絵画を描く。
日本フィル・シリーズ第2作、間宮芳生の「ヴァイオリン協奏曲第1番」では、この秋から日本フィルのコンサートマスターに就任する田野倉雅秋がソリストに登場。田野倉はこれまで広島、名古屋、大阪のオケでコンマスを歴任した実力者で、いよいよ東京での活動を本格始動する。日本の“民俗的”音楽家の旗頭として名を馳せ、90歳を越え今なお創作を続ける長老・間宮の若き日の感性の発露を、鮮烈に表現してくれるはずだ。
今回、新旧の日本フィル・シリーズと組み合わされるのはフランス近代の劇音楽だ。オリエンタルなエキゾティシズムが香るサン=サーンスの歌劇《サムソンとデリラ》より「バッカナール」の酒席で幕を開け、神々の愛の駆け引きを描いたルーセル「バッカスとアリアーヌ」で閉じる。管弦楽が多彩で華やかな効果を上げるこのバレエ組曲は山田の得意曲だが、こちらも最後には饗宴へと突入。プログラム・ビルディングにかけては一家言ある山田のこと、きっと新しいコンマスを音の宴で迎えようという趣向だろう。なんとも粋なはからいではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年8月号より)
第713回 東京定期演奏会
2019.9/6(金)19:00、9/7(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://www.japanphil.or.jp/