川瀬賢太郎(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

俊才たちが魅せるオール・ショスタコーヴィチ・プロ


 20世紀作品に近年積極的な東京シティ・フィルが、5月末の定期演奏会でショスタコーヴィチ・プロに挑む。しかも大曲のない小粋な演目で、愛好者にも敬遠気味な方にも薦めたい公演である。

 まず、ロシア革命が題材となる交響詩「十月革命」。本公演では最も重厚な音楽で、金管と打楽器が炸裂する豪快な音響が興奮を誘う、充実の力作だ。続いて、作曲者の息子マキシムのために書かれたピアノ協奏曲第2番を。ショスタコーヴィチとしては異例なほどの平明な響きで、面白い仕掛けや清澄な美しさあふれる、誰もが楽しめる逸品。メインは、諧謔味がありながら、古典的な完成度抜群のコンパクトな傑作、交響曲第9番。作曲はスターリン体制下の1945年で、戦勝を祝う偉大な“第9番”をという期待の中、人を食ったようなシンプルさとシニカルさが際立つ本作が発表された。果たして当局から批判を受けてピンチを招くことになるのだが、それをも承知で世に出したであろうショスタコーヴィチの気迫も感じられる重要作である。

 こだわりの3曲に臨むのは、神奈川フィル常任指揮者で、東京シティ・フィルとも良好な関係をもつ川瀬賢太郎。ショスタコーヴィチへの思いは深く、熱演も実現してきた川瀬だけに、この作曲家の情熱と皮肉を抉り出す充実の演奏への期待は大きい。ピアノは20歳でロン=ティボー国際コンクール優勝以来、澄んだ音色と名技で活躍中の田村響。歳の近い川瀬との気心知れた交歓で、ショスタコーヴィチの曇りのない微笑みを描き出してくれるに違いない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年6月号より)

第325回 定期演奏会 
2019.5/31(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 
http://www.cityphil.jp/

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