北陸で北欧とロシアの音楽を満喫!
ゴールデンウィークの古都が、今年も、たおやかな調べで満ち溢れる。「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2019」は、「北欧とロシアの音楽」がテーマ。世界的な名手たちが、北の国からの爽やかな風を思わせる佳品の数々を紡ぐ。
一昨年にスタートし、今年は4月28日から5月5日の8日間にわたって開催される「いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭」。5月2日までの「プレイベント」期間には、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)や、地元の音楽団体によるステージが催され、賑やかに祝祭気分を盛り上げる。一方、5月3日からの「本公演」期間中は、有料公演だけで41ステージを開催。多くは、一般的なコンサートの半分にあたる50分前後に公演時間を設定。“うまみ”が凝縮されたステージは、初心者も気軽に楽しめる。
音楽祭の聴きどころの一つは、国際的に活躍する精鋭楽団と世界的なマエストロたちが、初顔合わせも含めた、様々な組み合わせで生み出す、彩り豊かなオーケストラ・サウンドだ。
スウェーデンの名門・エーテボリ歌劇場管弦楽団は、音楽監督のヘンリク・シェーファーの指揮で、巨匠ギドン・クレーメルをソロに迎えてのシベリウス「ヴァイオリン協奏曲」[公演番号:C22]や、バリー・ダグラスとのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」[C14]などを披露。台湾が誇る知将リュウ・シャオチャとは、ムソルグスキー(ラヴェル編)組曲「展覧会の絵」などを[C12]。そして、オランダ出身の名匠ユベール・スダーンとは、チャイコフスキー「交響曲第4番」ほかを聴かせる[C24]。
あまり“お耳にかからない”珍しい作品にも出会える。デンマーク生まれのハンス・クリスチャン・ロンビ(1810~74)は、J.シュトラウスⅠに心酔し、ウィーン風舞曲の作曲家へ転身、「北欧のシュトラウス」の異名も。今回は、そんな知られざる作曲家と、シュトラウス家との「音楽対決」が実現。シャンパンを開ける音をモチーフにした両者の「シャンペン・ギャロップ」ほか、独特の味わいに満ちた作品を、シェーファー指揮で愉しむ[C32]。
そして、躍進著しいアジアのオーケストラの中でも、特に国際的な評価を高めている、台湾ではトップクラスの台湾国立フィルハーモニックも登場。音楽監督のリュウとの「交響曲第2番」[C15]などシベリウスの曲やR.コルサコフ「シェエラザード」[C33]に加えて、俊英ゲオルギス・オソキンスをソリストに据えてのショパン「ピアノ協奏曲第1番」をシェーファー[C23]、新星・藤田真央を迎えてのチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」をミヒャエル・バルケ[C21]のタクトで。
地元が誇るOEKも、今回特別に「祝祭」の2文字を名前に冠し、数多くのステージに出演。スダーン指揮でグリーグ「ペール・ギュント」組曲第1、2番[C13]やハチャトゥリアンの組曲「仮面舞踏会」[C34]などを披露する。
また、ヴァイオリンの巨匠クレーメルが、シベリウスの協奏曲でのソリストを務めるに留まらず、この音楽祭で計4ステージへ出演することも話題に。鮮烈な音楽創りで人気を誇り、超の付くほど多忙な、世界的ヴァイオリニストを聴ける貴重な機会だ。
まずは、現代ポーランド出身の大家ヴァインベルクによる無伴奏チェロのための「24曲のプレリュード」を、自身でヴァイオリン独奏用に編曲、リトアニア出身の写真家アンタナス・ストゥクスの映像とのコラボレーションで披露[H13]。オソキンスやOEK弦楽セクションとのシューベルトほか[H24]、やはりオソキンスと、自身で創設した室内楽団「クレメラータ・バルティカ」からチェロのギードレ・ディルヴァナウスカイテを迎えてのピアノ・トリオ[A31]と、先鋭的な試みに挑む。
そして、スタート以来、好評の「名曲チクルス」では、ショパンを取り上げる。三夜にわたるステージには、ダグラスやオソキンスら一線ピアニストに加え、公開オーディションで選ばれた地元の演奏家や、子どもたちも出演。他の室内楽のステージでもプログラミングされ、多面的に“ピアノの詩人”の魅力に迫る[K12、22、32ほか]。
さらに、ロシアの名作曲家の名を冠した弦楽四重奏の最高峰「ボロディン弦楽四重奏団」も登場。結成から70年以上の歴史を持つ名門が、OEKが誇るクラリネットの名手・遠藤文江と共にモーツァルトの「五重奏曲」などを披露[H23]する。期間中は、まさに“耳を離せない”注目公演が目白押しだ。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年4月号より)
いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭2019
[プレイベント]2019.4/28(日)~5/2(木・休)
[本公演]2019.5/3(金・祝)~5/5(日・祝)
会場:石川県立音楽堂、金沢市アートホール、北國新聞赤羽ホール 北陸エリア(福井・石川・富山)
問:いしかわ・金沢 風と緑の楽都音楽祭 実行委員会事務局076-232-8111
http://www.gargan.jp/