新ホール「フェニーチェ堺」 10月にグランドオープン!

大阪・堺が新たな文化発信地に──最先端の設備と多彩なオープニングのラインナップ

フェニーチェ堺 大ホール内観 ©石川拓也

 
 今年の10月1日、いよいよ「フェニーチェ堺」がグランドオープンする。大阪の中心地・難波からホール最寄り駅の堺東駅まで電車で10分ほどという至便の地に、新しい芸術文化の殿堂が生まれる。「フェニーチェ堺」とは、大阪第二の都市・堺市が総力を挙げて完成させた堺市民芸術文化ホールのこと。その芸術拠点のオープニングを飾るラインナップが発表された。真新しいホールの内装や響きはどうなのか、そこで展開される上演がいかなるものか、期待に胸は高鳴る。
 堺は幾多の戦乱からも不死鳥(フェニーチェ)のようによみがえり、伝統と文化を守っている。また中世、宣教師にイタリアのヴェニスのごとしと称されたことから、イタリア語でフェニーチェ(不死鳥)と名付けられている。ロゴにあるSACAYは16世紀末の西洋古地図にある表現で、そこには、本州では、国名以外に堺(SACAY)と都(MEAKO)のみが表記されていた。このように、歴史上、堺が繁栄した足跡を現代に発信する意図を含んで採用された。

 
オペラまで様々なイベントへの対応を可能とする大ホールと室内楽向けの小ホールを完備

 大ホールは3層バルコニー構造による2000席で、オーケストラ、オペラ、バレエ、ミュージカル、ポップスなど多彩なイベントや集会にも使える多目的ホールである。オペラ用のオーケストラ・ピットも備えている。毎年充実した公演を行っている堺シティオペラもオープニングラインナップに登場する(開幕シリーズで《アイーダ》を取り上げる)。小ホールはシューボックス型の312席で、室内楽、リサイタル、合唱など小規模な演奏会に好適である。大小ホールを中心に大小スタジオ、文化交流室、多目的室が配備され、さらに屋上庭園、交流・創作ガレリア、翁橋公園、本格イタリアン・レストランなど、憩いのスペースも充実している。
 「フェニーチェ堺」は「魅力づくり」「次世代づくり」「賑わいづくり」をスローガンとして、優れた舞台芸術や多彩な公演による、歴史文化のまち堺の魅力発信を目標としている。新しい機構により既存の概念を打破するような、クオリティの高い文化発信と文化創造の拠点となることを期待したい。
 
 

内外の著名アーティストが登場! オープニング・シリーズの聴きどころ

 オープニング・シリーズから注目公演をいつくか挙げよう。まずは、「ホセ・カレーラス スペシャルコンサート」(11/10)。三大テノールとして一世を風靡し、今でも毎年のように来日して美声を聴かせているが、今回は昨年生誕100年で盛んに取り上げられたバーンスタインの代表作《ウエスト・サイド・ストーリー》などのナンバーを歌う。カレーラスは、晩年のバーンスタインと全曲をレコーディングして、名盤を残している。そのメイキングのDVDが残されているが、カレーラスの真摯な態度とバーンスタインとの火花が散るような個性のぶつかり合いが感動的なドキュメントである。そのカレーラスの歌で〈トゥナイト〉などの名曲が聴ける。しかもバーンスタインの愛弟子、佐渡裕指揮日本センチュリー交響楽団の伴奏で。これ以上望めない顔合わせではないか。
 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(11/23)は、ベルリン・フィルやウィーン・フィルと肩を並べる世界最高峰のオーケストラである。弦も管も響きが上質でまろやか、いぶし銀のような底光りする独特の音を持っている。指揮者はパーヴォ・ヤルヴィ。日本ではNHK交響楽団の首席指揮者として有名だが、パリ管弦楽団、フランクフルトhr交響楽団の首席としても世界中から引っ張りだこの名匠である。昨年には芸術監督を務めるドイツ・カンマーフィルと来日して、キビキビとしたシューベルトの名演を聴かせてくれたのが記憶に新しい。今回の曲目は現時点で未定だが、どのようなプログラムでも、この名門オケと個性的なマエストロの組み合わせは、面白くないはずはない。
 「武満徹のミニフェスティヴァル3日間」(12/27〜12/29)にも惹かれる。没後20年を超えて、世界的評価を得ている武満徹の音楽。3日間にわたる演奏とトークにより、様々な側面に光を当てる好企画である。第1日目は指揮者・杉山洋一がプロデュースする「室内楽名品選」。1960年代の室内楽から「サクリファイス」「ユーカリプスⅡ」「悲歌」などを荒井英治(ヴァイオリン)、海野幹雄(チェロ)、近藤孝憲(フルート/ピッコロ)、吉野直子(ハープ)ら名手の演奏で。トークは杉山と荒井が担う。第2日目は評論家・小味渕彦之プロデュースで「ソング名品選」。合唱指揮者・西岡茂樹による特別編成合唱団により、アカペラ混声合唱曲「風の馬」「うたうだけ」「さようなら」など、ピアノ伴奏独唱で「小さな空」「燃える秋」などもある。トークは小味渕と西岡。最終日は武満真樹がプロデュースする「武満徹の友人たちトーク&ライヴ」。武満徹の愛娘真樹が家族ぐるみの付き合いのあったギタリスト・荘村清志を迎えて、思い出話と演奏(「フォリオス」など)を楽しむ。それにアコーディオン奏者・cobaも加わる。エキサイティングな3日間になるだろう。ここから新たな武満徹像が生まれるかもしれない。
文:横原千史
(ぶらあぼ2019年4月号より)

問:フェニーチェ堺 (堺市民芸術文化ホール) 072-228-0440
※グランドオープン公演ラインナップの詳細は、下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.fenice-sacay.jp/lp/opening/