フィルハーモニー・オーボエ・カルテットの結成は2016年。ベルリン・フィルのオーボエ奏者クリストフ・ハルトマンが1999年から主宰するドイツのランツベルク音楽祭で、モーツァルトの《魔笛》のオーボエ四重奏版を取り上げたのがきっかけだった。
弦楽器の3人はいずれもハルトマンの盟友。彼が同音楽祭の発足を機にスタートさせたアンサンブル・ベルリンの創設メンバーにあたる、チェロ奏者クレメンス・ヴァイゲル。そしてベルリン・フィルの同僚からはヴァイオリンのルイス・フィリペ・コエーリョと、ヴィオラのワルター・ケスナー。旧知の間柄にして音楽的視野を共有する、室内楽には理想の顔ぶれといってよい。
彼らの抱く使命感のひとつが、埋もれていた作品に光をあてること。今回も取り上げる《魔笛》は、モーツァルトと同時代のオーボエ奏者フランツ・ヨーゼフ・ロシナックによる、ドナウエッシンゲン宮廷図書館所蔵の編曲譜を現代に蘇らせたものだ。そのステージに、なんと佐渡裕が特別参加。指揮者ならぬナレーターとして、モーツァルト最晩年を飾る歌劇の世界を自ら監修した台本で語り尽くしてくれる。
プログラムの前半は、まず同じモーツァルトが25歳で書き上げたオーボエ四重奏曲。青春の輝きと哀しみの両方を刻印した名作である。そしてハルトマンがコールアングレに持ち替えて吹くフランセの四重奏曲(1971)には、「こんなにお洒落な曲があったのか!」と驚くこと必至。管楽器ファンならずとも注目のコンサートだ。
文:木幡一誠
(ぶらあぼ2024年11月号より)
フィルハーモニー・オーボエ・カルテット with 佐渡 裕(ナレーター)
2024.12/5(木)19:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/
他公演
2024.12/4(水) 鶴岡、12/6(金) 河口湖、12/8(日) 松戸、12/9(月) 足利、12/10(火) 堺