“私の天使たち”に、どうぞ会いに来てください
今年9月、フランス国立放送フィルが、13年間音楽監督を務めるチョン・ミョンフンに率いられ、6年ぶりの来日公演を行う。チョンにとっては異例なほど長く関係を保ってきた楽団だけに、期待も大きい。
「私はこの楽団に、職業上の尊敬よりもっと深い、人と人との繋がりを感じています。皆本当に気持ちのいい方たちで、仕事をする上で最高のコンディションを作ってくれます。そこで私は、彼らを“私の天使たち”と呼んでいます」
就任当時からの変化を尋ねると重ねてこう語る。
「変わったのではなく、あらゆる意味で深まったと思います。『日々さらによく』が、私と団員の考えです。また団員同士とても仲がよく、一緒に仕事をすることに喜びを感じています。これはオーケストラでは滅多にないこと。あるトランペット奏者などは、コンセルトヘボウ管に移りながら1年で戻ってきましたよ」
サウンド面はどうだろうか?
「フランスの演奏家は皆、音の色合いをキャッチする力があります。ドイツ音楽の演奏にも長けていますし、自国の音楽に関しては、さらに繊細な能力をもっていますので、自分たちの芯の部分から音を出すことができます」
まさに今回は、ベルリオーズ「幻想交響曲」とサン=サーンスの「オルガン付」交響曲をメインに据えた、オール・フランス・プログラムで臨む。
「偉大なフランス音楽の“ベスト中のベスト”が並んでいると自負しています。フランス=自国ものとの単純な考えではなく、いま一流の楽団ならあらゆる演目が可能であるのを鑑みた上で、『それでもなお』意図したフランス物です。自分が対象に対してどうアプローチし、どんな繋がりを見つけていくかという観点から、今回の演目を探っていきたいと思っています」
なお、ラヴェルのピアノ協奏曲を弾くアリス=紗良・オットに関しては、「初の共演だが、エクセレントな奏者であるのはわかっているのでとても楽しみ」とのこと。
そしてさらに熱いメッセージは続く。
「クラシック音楽は、長い年月、何十世代もの人々に感動を呼び起こし、残り続けてきました。ハイレベルな名曲を選んだ今回は、そうした時間を超えたムーブメントを、ご自身のハートで感じて頂きたい。それに、何の媒体も介さずに人と人の生身の感性のやりとりが発生する場所は、もはやクラシックのコンサートしかありません。その人間の声をぜひダイレクトに感じて欲しい。そして私は、例えば『幻想』を何度も演奏していますが、いつも全知識全経験をもって前回より良いものにしたいと心に決めています。そうした姿勢で臨む私と私のオーケストラを選んで聴きにきてくださったら本当に嬉しく思います」
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2013年7月号から)
チョン・ミョンフン(指揮) フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団
★9月29日(日)・横浜みなとみらいホール ローチケL35849
30日(月)・サントリーホール ローチケL35851
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp
他公演 10/1(火)・大阪/フェスティバルホール ローチケL56701
10/3(木)・アクロス福岡シンフォニーホール ローチケL84113
10/4(金)・静岡/グランシップ
総合問合:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
※プログラムは公演により異なります。