小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

新年を開く二大巨匠の熱き共演


 日本フィルの魅力といえば、ここぞというところで一丸となる豊かな感情表現力ではないか。それは80年代から常任、首席客演、音楽監督、そして現在は桂冠名誉指揮者として30年以上にわたりこのオケに深く関わってきた“炎のマエストロ”小林研一郎のイズムがしっかりと根を下ろしているということでもある。コバケンの音楽は日本人のウエットな情感になんとも強く訴えかける力を持っているのだ。
 2019年初月の東京定期演奏会は、コバケンがシューマンの「チェロ協奏曲」で同世代のもう一人の巨匠・堤剛と共演するのに注目だ。堤はスケールの大きな演奏で10代から国際的に活躍し、教育面においても戦後日本の音楽界を支えてきた重鎮。ひとたび舞台に立つと強いオーラが会場に流れる気を支配する。エキゾティシズムを帯びた哀愁の表現に始まり、大らかに歌う中間楽章を経て、リズミカルな終楽章まで休みなく演奏されるこの協奏曲には、渋い歌謡性から華麗な技巧まで多彩な表現力が求められる。巨匠たちの解釈やいかに。
 後半はチャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」。5楽章構成で、終楽章にはポーランドの舞曲ポロネーズが登場することからこの名がついた。後期三曲の交響曲に比べると演奏機会こそ多くないが、チャイコフスキーならではのダイナミズムやメランコリーもたっぷり味わえる。コバケンは何度もこの曲を取り上げ、レコーディングまでして魅力を伝えてきた伝道師。日本フィルと一体となった燃焼度の高い演奏で、曲の真価を浮かび上がらせてくれるはずだ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年1月号より)

第707回 東京定期演奏会
2019.1/25(金)19:00、1/26(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://www.japanphil.or.jp/