ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団

熟練の技で際立つ若きチャイコフスキーとショパンの旋律美


 1947年生まれの名匠ヤン・パスカル・トルトゥリエが、1月に新日本フィルの指揮台に立つ。20世紀の代表的な名チェリスト、ポール・トルトゥリエの息子で、ヴァイオリニストとして活躍しながら指揮者としてもその才能を発揮。マンチェスターのBBCフィルハーモニックの首席指揮者を長く務め、客演でも色彩感ある整ったアンサンブルを作りあげる職人的な手腕で、世界中の名オーケストラに登壇してきた。近年は彼が東京の実演に登場する機会が減少気味だったため、待望の舞台となる。また、新日本フィルは客演指揮者ともその意を十全にくみ取った名演が多く、今回も期待が高まる組み合わせとなる。
 メイン曲はチャイコフスキー交響曲第1番「冬の日の幻想」。作曲者20代の若々しい力感と旋律美にあふれる意欲的な大作で、特に第2楽章の哀愁に満ちた美しさは筆舌に尽くしがたく、特別に愛好するファンの多い作品でもある。あえてこの曲を選択したトルトゥリエがどう聴かせてくれるのか。絶妙な好演が体験できそうだ。
 さらに注目を集めるのは、クシシュトフ・ヤブウォンスキをソリストに迎えたショパンのピアノ協奏曲第2番。ポーランドを代表する名手で、ショパンコンクールの審査員も務める彼によるショパンは、まさに真打ちによる鉄板演目。しかも、2017年2月には同じく新日本フィルとの共演で同第1番を披露しており(指揮はアントニ・ヴィット)、約2年の間に同団体とショパン2曲を聴かせるのも貴重だ。練達の名匠たちの共演で、傑作の真髄を体感する。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2018年12月号より)

第598回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉
2019.1/24(木)19:00 サントリーホール
問:新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 
http://www.njp.or.jp/