「バッハ独特の音楽修辞学の理解と、真に相応しいテンポを探ること」。武久源造は「適正律(平均律)クラヴィーア曲集」へ対峙するにあたり、心を砕く2点を挙げる。13〜18番を収録した第3弾は、また構成を変えて、チェンバロで第1巻、フォルテピアノで第2巻を、番号順に収録。足鍵盤付きのせいもあり、壮大な音の広がりを感じさせるチェンバロに対して、意外に内省的なフォルテピアノの対比がまず面白い。そして、武久のプレイは、相変わらず鮮烈。スリリングさをも孕んだ作品の全体像を見据えつつ、ほとばしる熱情と冷静な知性との絶妙なバランスを保ち、聴く者に至高の愉悦をもたらす。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年1月号より)
【information】
CD『適正律クラヴィーア曲集第1集・第2集 第13番〜第18番/武久源造』
J.S.バッハ:適正律クラヴィーア曲集第1集より第13番〜第18番(チェンバロによる)、同第2集より第13番〜第18番(フォルテピアノによる)
武久源造(チェンバロ/フォルテピアノ)
コジマ録音
ALCD-1180 ¥2800+税