10月29日、東京文化会館にて、「東京・春・音楽祭2019」(以下、東京春祭)の概要発表記者会見が開かれた。3月15日から4月14日まで1ヵ月間にわたって、過去最大規模となる200公演以上(有料公演約70公演、その他の公演130公演以上)が開催される。
(2018.10/29 東京文化会館 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
東京春祭は今回で第15回を迎える。会見の冒頭で鈴木幸一・同音楽祭実行委員長は「15年を振り返ってみれば苦い思い出も多い。初年度は東京文化会館の客席が(空席だらけで)真っ赤だった。あるとき、リッカルド・ムーティさんにもう音楽祭をやめようかと話したら、音楽祭は続けることに意味があると励まされた。だからこそ続けてこられた」と語った。
その巨匠ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー in 東京」が今回よりスタートする。これはムーティが毎夏ラヴェンナで開催する若い音楽家のためのアカデミーを東京で開催するもので、公募による指揮受講生がムーティからイタリア・オペラの真髄を学ぶ。2019年はヴェルディの《リゴレット》、20年は《マクベス》、21年は《仮面舞踏会》がとりあげられる。また、アカデミーの第1回を記念して、ムーティ指揮東京春祭特別オーケストラの演奏により、《リゴレット》が演奏会形式で抜粋上演される。
東京春祭といえば、恒例のワーグナー・シリーズを楽しみにしている方も多いことだろう。ダーヴィト・アフカム指揮NHK交響楽団により《さまよえるオランダ人》が演奏会形式で上演される。題名役に招かれるのはブリン・ターフェル。会見に同席した西川彰一・NHK交響楽団演奏制作部長は「ふだんオペラを演奏する機会の少ないN響にとって、この音楽祭はじっくりとオペラに取り組める貴重な機会。すばらしい指揮者たちに加え、豪華歌手陣との共演はオーケストラの技術力向上にも役立っている」と述べた。
第6回を迎える「合唱の芸術シリーズ」では、大野和士指揮東京都交響楽団と東京オペラシンガーズにより、シェーンベルクの大作「グレの歌」が演奏される。「編成が大きくなかなか演奏機会に恵まれないが、音楽祭の15周年にふさわしい作品」(赤羽朋子・東京都交響楽団常務理事・事務局長)。マエストロ大野の意向もあって、この大作が選ばれた。
第15回を記念する「The 15th Anniversary Gala Concert」にはフィリップ・オーギャン指揮読売日本交響楽団が登場し、充実の歌手陣とともに、これまでの15年を彩ってきたオペラの名場面の数々を振り返る。
また、子どもたちも楽しめる企画として、バイロイト音楽祭との提携公演となる「子どものためのワーグナー《さまよえるオランダ人》」が上演される。09年よりバイロイトで始められた「子どものためのオペラ」がドイツ国外で初めて開催されるもので、子どもたちが飽きないように工夫を凝らしたという約1時間のコンパクトなオペラ。バイロイト音楽祭総監督カタリーナ・ワーグナーが来日して監修する。
「海外の演奏家同士が音楽祭でばったり出会うことも珍しくない。そんな様子を見ると、音楽祭としての基礎ができたのかなと思う」(鈴木実行委員長)。
節目の第15回を迎え、上野の春はいっそうの賑わいを見せる。
取材・文:飯尾洋一
東京・春・音楽祭2019
2019.3/15(金)〜4/14(日)
東京文化会館、東京藝術大学 奏楽堂(大学構内)、旧東京音楽学校奏楽堂、
上野学園 石橋メモリアルホール、国立科学博物館、東京国立博物館、東京都美術館、
国立西洋美術館、上野の森美術館、東京キネマ倶楽部 他
問:東京・春・音楽祭実行委員会03-5205-6497
http://www.tokyo-harusai.com