世界が注目する新鋭指揮者が吹奏楽のステージに登場!
1986年シンガポール生まれの新鋭指揮者カーチュン・ウォン。ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で学び、2016年グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール優勝。この秋からニュルンベルク交響楽団の首席指揮者に就任した注目株だ。すでに日本でも各地のオーケストラで実績を重ねているが、この11月、東京佼成ウインドオーケストラの定期演奏会に登場する。実は彼自身も吹奏楽出身。小学校入学と同時に吹奏楽部でトランペット(コルネット)を吹き始め、18歳から2年間のナショナル・サービス(兵役)では軍楽隊に所属。吹奏楽一筋だった。
「実は今回演奏するジェイムズ・バーンズの『呪文とトッカータ』は、中学1年生の時の吹奏楽コンクールの課題曲でした。生徒全員がバーンズ自作自演の佼成ウインドのCDを聴きました。私が初めて買ったクラシック音楽のCDです」
つまり佼成ウインドは彼の出発点のひとつなのだ。初めて聴くプロフェッショナルな吹奏楽に感嘆したという。今回はさらに、その2年後のコンクールの課題曲だったというヤン・ヴァンデルローストの「スパルタクス」や、吹奏楽版で演奏したことがあるという、マルコム・アーノルドの「ピータールー序曲」とムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」も振る、いわば彼のルーツを辿るプログラムとなっている。吹奏楽の指揮は久しぶり。プロの楽団を振るのは初めてだ。吹奏楽の魅力は、その音色の豊かさだと説く。
「ユーフォニアムやソプラノ、テナー、アルト・サックスなど、通常の管弦楽にはない楽器が使われています。たとえばブルックナーの交響曲で聴かれる金管のコラールと、ヴァンデルローストの金管バンドのための『カンタベリー・コラール』という作品を比べてみてください。明らかに後者のほうがオルガンのような響きがします。もちろん、どちらが良いかということではなく、まったく別のものなのです。大切なのはいい音楽かどうかだけ。ぜひ耳と心と目を開いて吹奏楽を聴きにいらしてください」
2012年から3年間、最晩年のクルト・マズアに就いてさまざまなことを学んだ。
「パーキンソン病で動かない身体の彼が起こす奇跡のような瞬間も目の当たりにしました。でも、音楽のことはもちろんですが、彼から勉強した一番大きなことは、人間の心です。彼は最後まで熱い心を持っていた。怒る時も子どものように笑う時も、いつも真剣でした。私も自分の心に、自由に真面目に従うことを心がけたいと思っています」
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2018年10月号より)
東京佼成ウインドオーケストラ
第141回定期演奏会
2018.11/23(金・祝)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
第3回大阪定期演奏会
2018.11/24(土)19:00 ザ・シンフォニーホール
問:東京佼成ウインドオーケストラ チケットサービス0120-692-556
http://www.tkwo.jp/