ギターの夏祭りが今年もやってくる。荘村清志と福田進一の大御所二人が牽引する「Hakuju ギター・フェスタ」は今年で13回目。文字どおりギター三昧の3日間なのだが、ギタリストやギター・ファンのためだけではなく、広く音楽ファンを楽しませてくれる多彩な構成も魅力だ。今回はメゾソプラノの波多野睦美が第二夜(9/1)に招かれた。
「ギターは楽器ごとの個性がものすごくあって、それがさらに奏者によってまったく違うものに聴こえてくる。個性がくっきり出るのが面白いですね」
デビューが、つのだたかしとのリュートソングだったので、撥弦楽器は身近な存在。しかも実はそのずっと前から、ギターとの共演を潜在的に思い描いていたらしい。
「リュートソングでのデビュー後に郷里の旧友から、『そういえば昔、“横に並んだ楽器”と歌いたいって言ってたよね』って。声楽を始めた高校生の頃の話だと思います。自分では忘れてましたけど(笑)」
“横並び”というのは演奏位置のことだけではなく、対等の感覚で共演できるかどうか。たとえばピアノという楽器を対等に感じられるようになったのは、「最近高橋悠治さんと共演するようになってから」だという。その“対等感”があるのがギターだ。
今回は福田、荘村との共演でフェスティバルのテーマ「イタリア」に沿って、バロックから映画音楽までイタリアの歌の400年を辿る。ロンドンで学んだ波多野。その時期の数年間はイタリアの音楽とまったく縁がなかった。
「古楽との関わりのなかでモンテヴェルディにはまり、最近はヴェルディやプッチーニもよく聴きます」
プログラムは「あこがれの地」としてのイタリアがテーマという。プログラムのなかでは、古楽を本拠とする波多野が歌う『ニュー・シネマ・パラダイス』や『ロミオとジュリエット』が新鮮に映る。7月にはギターの大萩康司と歌った映画音楽集CDも発売されるところだ。「最初に夢中になった歌い手はカレン・カーペンター。次がエラ・フィッツジェラルド」という遍歴はやや意外。
「楽器としての声は、大小どんな会場でも聴こえるようにテクニックを勉強するわけです。でもそれは、いわゆる“マイクのり”とまったく同じテクニックなんです。世の中にはたくさんの種類の優れた歌い手がいるのだから、それを盗まない手はありません。クラシックが上でポップスが下ということは決してないですから」
夏の終わり、時代やジャンルを自在に行き来するしなやかな声とギターの音色に乗って「イタリア」が聴こえてくる!
取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ2018年8月号より)
第13回 Hakuju ギター・フェスタ2018
第一夜 2018.8/31(金)19:00
第二夜 2018.9/1(土)18:30
フィナーレ 2018.9/2(日)15:00
旬のギタリストを聴く 徳永真一郎リサイタル 2018.9/1(土)16:00
Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp/