吉田裕史(ボローニャフィルハーモニー管弦楽団 & さわかみオペラ芸術振興財団 芸術監督/指揮)

名古屋城天守閣という最高の借景で《トスカ》を上演

 イタリアを中心に活動する指揮者・吉田裕史が芸術監督を務めるさわかみオペラ芸術振興財団が主催する「ジャパン・オペラ・フェスティヴァル」。前身の企画から通じて、姫路城、平城京跡大極殿といった歴史的建造物の前に特設ステージを組んで野外オペラを上演している。今年は名古屋城の天守閣前での《トスカ》。
「ローマ歌劇場やボローニャ歌劇場の総裁だったフランチェスコ・エルナーニさんを平安神宮にお連れしたとき、彼が『この中庭でオペラを上演できたら素晴らしいね』と仰ったのがヒントでした。私も、オペラ・デビューがローマ歌劇場のカラカラ浴場公演でしたし、トッレ・デル・ラーゴのプッチーニ・フェスティヴァルでも指揮していますので、屋外上演の醍醐味は経験していましたから。特に日本でのこの公演は、歴史的な建物を背景にした“借景”のスケール感が最高のスペクタクルです」
 歌手とオーケストラはイタリアから来日。装置と衣裳もイタリアから運ぶという本格的な公演だ。演出はピエール・フランチェスコ・マエストリーニ。
「全役オーディションで、最高のキャストを組みました。イタリアではキャスティングの際、特に“ティンブロ”、つまり声の質や色を重視します。今回、イタリア人審査員たちが『20代の若い歌手にトスカ役が歌えるわけがない』と侃々諤々とやるのをさんざん聞かされました。軽い声ではダメ。強い声で、同時に可憐さも表現できる声を持っていることを一番に考えて選んだ配役です」
 主要3役はダブルキャスト。トスカ役はアマリッリ・ニッツァとキアーラ・イゾットン、カヴァラドッシ役はカルロ・ヴェントレとサムエーレ・シモンチーニ、スカルピア役にジョヴァンニ・メオーニとルーカ・ダッラミーコ。
「ニッツァ、ヴェントレ、メオーニの3人はベテラン。《トスカ》はおそらく何百回も歌っているはず。ニッツァとは7月にプッチーニ・フェスティヴァルの《蝶々夫人》でも共演します。いつもプロフェッショナルに最高の歌を聴かせてくれる、信頼できる歌い手です。他の3人は若手でイゾットンのトスカは初役です。オーディションで断トツの評価で彼女の起用が決まったあと、審査員だったライナ・カバイヴァンスカがひとこと。『よかったわ。彼女、私の生徒なの』。公平な審査のために黙っていたことに感動しました。日本にも観に来ると言っていますし、それまでにきちんとトスカを教えると約束してくれました。カバイヴァンスカといえば20世紀最高のトスカですからね」
 オーケストラは、ボローニャ市立歌劇場管弦楽団のメンバーたちで結成されたボローニャフィルハーモニー管弦楽団。吉田が芸術監督を務める。
 取材に同席した同団コンサートマスターのパオロ・マンチーニは「《トスカ》は、私たちイタリア人にさえ、とにかく全力を要求するドラマティックな作品。実生活で落ち込んだりしていたら演奏できないほどエネルギーが必要。客席を響きで震わせるような演奏をお聴かせしたいです」と意気込む。
 木造に復元のため、来年には解体される名古屋城天守閣。イタリアの声と響きに彩られる名作オペラとともに、目と耳に焼き付けるチャンスだ。
 また、東京では、吉田の指揮によるボローニャフィルの公演(9/5 サントリーホール)と、同フィルの首席たちによる公演(9/13 浜離宮朝日ホール)もあるので、こちらも併せて楽しみたい。
取材・文:編集部
(ぶらあぼ2018年7月号より)

ジャパン・オペラ・フェスティヴァル2018 in 名古屋
野外オペラ《トスカ》名古屋城天守閣前
2018.9/8(土)、9/9(日)、9/11(火)、9/12(水)、9/14(金)、9/15(土)各日18:00
名古屋城天守閣前 特設ステージ
問:さわかみオペラ芸術振興財団03-6380-9862
http://tosca.sawakami-opera.org/
※公演の詳細については上記ウェブサイトでご確認ください。

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