ウラディーミル・アシュケナージ(指揮)

C)Keith Saunders
 「アイスランドは人口がわずか30万人ほどの小さな国ですが、アイスランド交響楽団はイギリスやドイツのハイレベルな楽団に匹敵する実力があると考えています」
 現在、この楽団の桂冠指揮者を務めるウラディーミル・アシュケナージは自信を持って断言する。1950年に創立されたアイスランド響は、本拠地首都レイキャビクの美しいホール「HARPA」での定期演奏会のほか、海外ツアーも積極的に行っている。これまでにロストロポーヴィチ、バレンボイム、ムター、プレヴィンといった錚々たるアーティストと共演しており、その音楽の質の高さにより欧州で確固たる地位を築いてきた。
 超一流のピアニストとしてもキャリアを積んだアシュケナージだが、「実は初めてオーケストラを指揮したのがアイスランド響でした。オーケストラは私にとても“優しかった”のです。当時、明快に指揮することができない私の棒について、しっかりと演奏してくれました」と、当初はオーケストラに助けられたことを明かした。
 日本公演には、シベリウスとラフマニノフの交響曲第2番、そしてショパンとラフマニノフのピアノ協奏曲第2番などがプログラミングされている。いずれも有名&人気作品で、アイスランド響にとっても得意なレパートリーだ。
 ツアーのソリストは辻井伸行。アイスランド響とは初共演となるが、アシュケナージとは2010年以来、何度も共演している。
「彼は音楽家としてもピアニストとしても素晴らしいです。彼の演奏の明晰さは、多くのピアニストのそれを凌駕しています。そのうえ、知的で情感の豊かさにも優れている。ですから、彼の奏でる音楽は非常に美しく、一緒に演奏するのがとても楽しいのです」
 辻井に対しては「私は音楽家の能力を説明するのが苦手です」と断った上で、以下のように続ける。
「少なからぬ音楽家の間で、他の演奏家との違いを際立たせようとして、少し違った演奏をしたがる傾向がみられます。ほとんどの場合、そうした演奏は不自然な結果に終わるのです。辻井さんはそのようなことを決してしません。彼の演奏は音楽の“本質”そのものです」
 辻井はショパンとラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾く。
「私がアイスランドに拠点を移した直後にバレンボイムを招いて、指揮してもらいました。彼が指揮活動をはじめたばかりだったと思います。その際にソリストの私が弾いたのがショパンのピアノ協奏曲第2番でした。同じ曲を今度は私が指揮して辻井さんが弾く。感慨深いものがあります」
 最後に今回の日本公演についてこう締めくくる。
「アイスランド響との日本公演が実現することとなり、本当に嬉しいですし光栄に思います。私は、音楽にすべてを捧げている楽団員によるこのハイレベルなオーケストラが大好きです。日本では素晴らしい演奏を披露できるはずです」
取材協力:エイベックス・クラシックス・インターナショナル
構成・文:編集部
(ぶらあぼ2018年6月号より)

【動画】アシュケナージ氏より日本公演に向けてのメッセージ


【公演情報】
ウラディーミル・アシュケナージ(指揮) アイスランド交響楽団
ピアノ:辻井伸行
2018.11/3(土・祝)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール 
11/8(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
11/16(金)19:00 東京芸術劇場 コンサートホール
11/17(土)15:00 所沢市民文化センター ミューズ アークホール
問:チケットスペース03-3234-9999
※公演によりプログラムは異なります。全国公演(浜松・札幌・広島・福岡・大阪・名古屋・岡山・長岡)の詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。 
http://avex.jp/classics/iso2018/