日本フィルハーモニー交響楽団 コンチェルト × コンチェルト!! Vol.1

レジェンドの“醸造”をダブルで満喫

 いきなり“レジェンド”の登場だ。日本フィルの新シリーズ「コンチェルト×コンチェルト!!」は、著名ソリストが奏でる協奏曲2曲をメインにした美味しい企画。6月のVol.1でスポットを浴びるのは、クラリネットのリチャード・ストルツマンである。彼は、純然たるソリストとして長年活動を続けてきた、同楽器史上稀な存在。リサイタルや協奏曲のみならず、ジャズやフュージョンでの実績も光っている。また70作を超えるディスクをリリースし、グラミー賞も2度受賞。ハリウッドボウルとカーネギーホールでクラリネット・リサイタルを行った最初のアーティストになるなど、前代未聞の業績を挙げている、その名人芸的な手腕は言わずもがな。彼は、抜群の音楽センスで聴く者を惹きつけ、とろけるような音色と絶妙なフレージングで陶酔の世界に誘う。
 今回の演目は、モーツァルトとコープランドのクラリネット協奏曲。ストルツマンは、昨年9月のサントリーホール「チェンバーミュージック・ガーデン」におけるブラームスのソナタなどでも、練達の至芸を披露したばかりだ。とはいえベテランゆえ、2大名作をまとめて耳にできるのは、当然貴重な機会。管楽器協奏曲の最高峰たるモーツァルトの名品はもちろん、ベニー・グッドマンのために書かれたコープランドの協奏曲は、彼の本領発揮に相応しいだけに必聴だ。今年4月からオーケストラ・アンサンブル金沢のレジデント・コンダクターに就任するなど、近年活躍が際立つ田中祐子の指揮と、好調・日本フィルの演奏も期待大。カップリングのバーンスタイン「ウェスト・サイド・ストーリー」より「シンフォニック・ダンス」なども楽しみだ。
 何はさておき、“現役のレガシー”をとくと堪能しよう。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2018年6月号より)

2018.6/2(土)14:00 Bunkamuraオーチャードホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
http://www.japanphil.or.jp/