曽根麻矢子(チェンバロ)& 朝岡 聡(ナビゲーター)

“ヴェルサイユの庭”で優雅な音楽散歩

左:曽根麻矢子 右:朝岡 聡
Photo:M.Otsuka/Tokyo MDE

 誰もが気軽にくつろげる庭園をイメージし、バロック音楽を楽しもうというシリーズ『チェンバロの庭』。チェンバリストの曽根麻矢子が演奏を、そして「リコーダー好きのバロック少年だった」というアナウンサーの朝岡聡がナビゲーターを務め、麗しい音楽の花束をみんなで愛でるような時間だ。3月28日のシリーズ第2回は、フランス王ルイ14世の命で生まれた広大かつ豪勢な宮殿をイメージし、「ヴェルサイユの庭」というタイトルで行われる。

ルイ14世ゆかりの作曲家の作品を次々と

 朝岡「ヨーロッパには個人の趣味が反映されている貴族の庭などがたくさんあり、歩いてみると花や彫刻、通路の形などにこだわりを感じます。ヴェルサイユ宮殿は広大ですから、俯瞰した写真や映像などを観ることは多いのですが、実際に自転車で回ってみると花壇にいろいろな花が植えられているなど、新鮮な発見がたくさんありました。コンサートでお聴きいただく音楽は、そうした花や彫刻と同じように私たちのこだわりのようなもの。庭園の写真や同じ時代の絵画なども観ていただきながら、曽根さんの演奏をお楽しみいただくという趣向です」
 曽根「ルイ14世に関わっている作曲家はたくさんいて、今回のためにあらためて手元にあった楽譜を見直してみると、しゃれた題名がついているいい曲がたくさん見つかりました。ですから初めて弾く曲も多いのですが、どれも心地よい曲ばかりで、タイトルから受けるイメージそのままです。ダンドリューやシャンボニエールなど、作曲家や曲だけをみるとマニアックですけれど、宮殿や庭園を歩きながら風景などを楽しむように聴いていただけるでしょう」
 朝岡「このタイトルからこういう曲になるのかという楽しみ方もできますし、短調の曲もありますが決してドーンと暗い音楽ではなく、晴天だったのに雲が出てきて陰るという程度。貴族は深刻に悩まず、もしかすると悩むふりを楽しんでいたのかなと思ってしまうほどです。そしてなにより、曽根さんの“白様(しろさま)”が聴けて、楽器に描かれている素晴らしい絵柄を楽しめるのがいい!」

白く美しい楽器自体がまるで“小さな庭”

 その“白様”というのは、ニコラ・ブランシェ(1722年)などをモデルに特別に作られたチェンバロ(デヴィット・レイ作、フランス式2段鍵盤)。3年ほど前に日本へ上陸し、曽根のスタジオにある。まばゆいばかりの白を基調にしているこの楽器は、花や鳥など繊細でカラフルな絵が描かれているという逸品だ。
 曽根「楽器に描かれている絵がまるで“ひとつの庭”のようになっていますから、今回のテーマにはぴったり。3年間じっくりと弾いてきましたので、音も私好みのまろやかなものになりました。スタジオから外へ持ち出す機会が年に数回ですから、お客様に聴いていただくことが少なく、何より“白様”はHakuju Hallの空間が好きなんです。相性がとてもよく、私自身も演奏していて『いい音だなあ』と気持ちよくなってしまいます」
 これには朝岡も「いま日本にあるチェンバロの中で、美しさも音もナンバーワンだと思います」と絶賛。目も耳も心も幸せになるフレンチ・バロック音楽ナイトだが、ヴェルサイユ宮殿に憧れている方、訪れたことがある方、貴族社会に関心がある方、優雅な雰囲気に浸りたい方なども楽しめるはず。2人と“白様”が作り出す親密な空間へ、気軽に足を踏み入れてみてはいかがだろう。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2018年2月号より)

曽根麻矢子 プロデュース チェンバロの庭 vol.2 〈ヴェルサイユの庭〉
2018.3/28(水)19:00 Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700 
http://www.hakujuhall.jp/