ダンスと声楽が一体となって現れる幽玄な世界
美術には世界的に活躍している塩田千春が参加する。近年日本で公開された『鍵のかかった部屋』は無数の赤い紐を部屋中に張り巡らせたものだった。本作でも、舞台を覆う黒い紐状の舞台装置が効果的に使われる。それは絡まりあった松の葉のようにも、姉妹が住む海の底のようにも見える。
ヴァルツはダンスでも演劇的な要素を豊かに取り入れながら、身体のリアルを強く深く追求してきた。今回もダンスは自身のカンパニーであるサシャ・ヴァルツ&ゲスツが出演する。彼女は「コレオグラフィック・オペラ」というスタイルを提唱しているが、これは歌手やコーラスにもダンス的要素を要求するものだ。「舞踊とオペラが融合した新しい作品形態を最も的確に実現」することを期して作曲したという細川の言葉を考えると、ヴァルツとのコラボレーションは最高の形でのオペラ上演といえるだろう。管弦楽はデヴィッド・ロバート・コールマン指揮の東京交響楽団。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ2018年1月号より)
2018.2/16(金)〜 2/18(日) 新国立劇場 オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
http://www.nntt.jac.go.jp/opera/