川畠成道(ヴァイオリン)

“マニアック”な作品も楽しめる多彩な90分

 音楽ライター山野雄大の解説付きで選りすぐりの演奏をお届けする、第一生命ホールの名物企画『雄大と行く 昼の音楽さんぽ』。来る第12回には人気ヴァイオリニストの川畠成道が登場。「自身もヴァイオリンを弾いた作曲家たち」をテーマにして集めた、時代も国も様々な珠玉の小品を披露する。共演は、山口研生(ピアノ)。
「パガニーニ、ヴィエニャフスキ、サラサーテ、イザイなどのヴィルトゥオーゾたちはヴァイオリンの機能を知り尽くしている作曲家。たとえ技巧を凝らした難曲であっても、理に適った自然で滑らかな動きが、どこか演奏家の自分としては手に優しいと感じます。山野さんとのトークではそのあたりの話もできたらと思っています」
 プログラムにはドヴォルザークやシェーンベルクなど、意外な作曲家の顔ぶれも。
「ドヴォルザークは、恐らく名人という程の腕前ではなかったようですね(笑)。演奏よりも音楽が先にありきといった感じです。十二音技法で書かれたシェーンベルクの『幻想曲 op.47』は学生時代に演奏した記憶がありますが、プロになってからは今回が初めてです。普段あまり弾かないような少しマニアックな作品も、解説を交えることで皆さんにわかりやすく聴いていただけるのがこの企画の良いところだと思って、山野さんとも相談して選びました。やはり知られざる楽曲の魅力を伝えることも演奏家の大事な使命であると思うので…」
 演奏会は平日の11時スタート。客席には友人たちとランチ前のひとときを楽しむ女性グループの姿も多いとか。
「夜型人間の自分には結構早い時間ですが(笑)、1曲目のエルガー『朝の歌』で気持ち良く目を覚ましてから、バッハの金字塔を超えようとしたイザイ『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番』などの気骨のある楽曲に挑みたいです。でも基本的には、最近のリサイタルでもよくとりあげている、ミルシテイン『パガニーニアーナ』のような自分で弾いていて楽しい楽曲ばかりなので、リラックスした雰囲気を期待して足を運んでいただけたら嬉しいです。そういえば、8年程前に初めて第一生命ホールで演奏したのもお昼のコンサートでした。今回もぜひご期待下さい」
 5月にはこれまでの録音から自選した12曲に未発表曲4曲を加えた集大成的ベスト盤を発売したばかり。来年はデビュー20周年の節目を迎える。
「以前から宣言していたように、バッハ無伴奏作品の全曲録音をリリースする予定です。今年の後半はそれに向けての準備に入ります!」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2017年9月号より)

雄大と行く 昼の音楽さんぽ 第12回 川畠成道 つよく優しきヴァイオリン
2017.10/4(水)11:00 第一生命ホール
問 トリトンアーツ・チケットデスク03-3532-5702 
http://www.triton-arts.net/