豪華ゲストと奏でるラテン音楽のリズムと熱気
ギター音楽に特化したユニークな都心の音楽祭として、今年12回目を迎える『Hakuju ギター・フェスタ』。荘村清志と福田進一がプロデューサーを務め、毎回テーマや出演ギタリスト、委嘱作品などが話題となるのだが、今年はギター曲の宝庫であるラテンアメリカに焦点が当てられる。多彩なリズム、魅力的なメロディ、ワールド・ミュージックやジャズにも通じるテイストなど、ホール内の温度が少しだけホットになりそうな音楽だ。
ギター・フェス委嘱新作はcoba
「ギター・フェス委嘱の新作はcobaさんにお願いしましたが、これまでのようなデュオ作品ではなく、しばらくの間はソロの曲を充実させることにしました。これを荘村さんが初演します(8/18)。また、林美智子さんをお迎えして、珍しいピアソラの歌曲を取り上げる回があります(8/19)。ピアソラの存命時にはミルバなどが歌っていたのだと思いますが、それをクラシックの歌手である林さんが歌うわけですから、新しい魅力が生まれるでしょうね。ほかにも、ぜひ日本の皆さんに聴いていただきたかったチリ出身のホセ・アントニオ・エスコバル(8/19)、近年、活動の拠点を日本に移したアルゼンチン出身のレオナルド・ブラーボ(8/20)、そして若い世代の可能性を感じるクアトロ・パロス(ギター・クァルテット、8/19)など、今回も充実したギタリストたちが集まってくれましたので、世界でもトップクラスの演奏がお楽しみいただけるはずです」(福田)
レアなピアノとギターのデュオ曲の魅力
その福田も、先頃CDをリリースしたバリオスの作品や、名曲「エストレリータ」の作曲家であるポンセの作品などを演奏(8/20)。しかしさらに気になるのは、そのポンセがセゴビアのために作曲した「南の協奏曲」や、カステルヌォーヴォ=テデスコがセゴビア夫妻のために作曲した「幻想曲」という、聴けること自体が珍しいギターとピアノのためのデュオ作品を取り上げる回だ(8/18)。
「どちらも、こんなに素晴らしい曲なのになぜ演奏されないのかと不思議に思える名作ですが、今回は以前にもヴィラ=ロボスの協奏曲などをご一緒した三舩優子さんにピアノをお願いしました。三舩さんはここ3年ほど、東京国際ギターコンクールの審査員も務めていらっしゃいますので、この人しかいないなと声をおかけしたわけです」(福田)
その三舩は、惜しくも1996年に亡くなった名手である芳志戸幹雄を叔父にもち、幼い頃からギターを聴いて育ったという。
「『南の協奏曲』『幻想曲』ともピアノが単なる伴奏で終わらず、ギターとの掛け合いなど音楽的にとても充実している作品です。いくつか候補があった中で、こんなにかっこいい曲があったのかと思い、ポンセの協奏曲もリクエストさせていただきましたが、福田さんも今回で演奏されるのが2回目だということですから、本当に貴重なコンサートですね」(三舩)
「三舩さんには、やはり珍しいピアソラのピアノ曲も弾いていただきますけれど、それを知って荘村さんが、だったら自分も! とピアソラのギター曲(5つの小品)を演奏するなど、相互作用でプログラムが決まっていきました」(福田)
名曲、レア曲、聴き逃すと後悔するプログラムなどが並ぶという3日間。今年もHakuju Hallに麗しい音色が響く。
取材・文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ2017年8月号より)
第12回 Hakuju ギター・フェスタ 2017 魅惑のラテンアメリカ
2017.8/18(金)19:00 [第一夜] 荘村清志〜coba新作世界初演/福田進一 meets 三舩優子〜ギターとピアノの対話
2017.8/19(土)16:00 [旬のギタリストを聴く] クアトロ・パロス リサイタル
2017.8/19(土)18:30 [第二夜] ホセ・アントニオ・エスコバル デビュー/林 美智子 ピアソラを歌う
2017.8/20(日)15:00 [フィナーレ] 福田進一〜ポンセ、バリオスを弾く/レオナルド・ブラーボ/魅惑のギター・アンサンブル
Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
http://www.hakujuhall.jp/