世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋)が今年開場20周年を迎えた。4月6日に会見が行われ、公益財団法人せたがや文化財団理事長・同館館長の永井多惠子と同館芸術監督の野村萬斎が登壇した。
(2017.4/6 キャロットタワー Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)
世田谷パブリックシアターは現代演劇と舞踊を中心とする専門的な作品創造・上演活動と、市民の自由な創作や参加体験活動を通し、新しい舞台芸術の可能性を探る劇場として1997年4月5日に開場。開場当初より様々な「作品創造・上演」と「普及啓発・人材養成」のプログラムを展開している。
永井は20周年を迎えたことについて、次のように語った。
「財団設立は開場前年の11月で、演劇とダンスを特徴とする劇場、社会に何かを問いかける同時代性を意識した劇場にしよう、ということだけ決め、あとは手探り状態だった。ピーター・ブルックの『ハムレット』『ザ・マン・フー』やサイモン・マクバーニーの『ストリート・オブ・クロコダイル』を紹介し、これら初期の作品群がこの劇場の芸術的な“質”や“色”を決めたと思っている」
また、開場20年間のうち4分の3の期間、芸術監督として関わっている野村萬斎については、「英国留学された経験があり、現代演劇にも精通している。この劇場がこの地域住民を楽しませるとともに、日本の文化を全国、国際的にも発信していきたいと考えた時に、伝統芸能という日本のスタイルをもって世界的な戯曲を表現し、国際的にも発信をしてもらえると考えた」と語った。
一方、1997年のオープニング時にこけら落としの式典で『三番叟』を披露し、その後2002年に36歳の若さで同館芸術監督就任、以来その職をつとめている野村は、「1994〜95年に英国留学中に、この劇場で取り上げられてきたピーター・ブルック、ロベール・ルパージュ、サイモン・マクバーニーなど、最先端で、いまなお力をもったアーティストの作品に触発され、また演劇が社会貢献している現場を目の当たりにしてきた。その上で実験的な作品を生み出す世田谷パブリックシアターという劇場の“色”が私が思い描いていた劇場像により近いもので共感を抱いた」と就任時の思いを振り返るとともに、「世田谷から東京、アジア、世界へと同心円状に広がっていくような普遍的な作品、時代を映す同時代的な作品を創っていきたい」という就任時に立てた方針は15年経ったいまも揺るがないと述べた。
開場20周年記念公演として、狂言『唐人相撲』/『MANSAIボレロ』が4月9日まで上演された他、6月には勅使川原三郎『ABSOLUTE ZERO 絶対零度 2017』、7月に野村自身の演出で『子午線の祀り』、12月には日韓文化交流企画『ペール・ギュント』(主演:浦井健治)が上演される。
勅使川原三郎『ABSOLUTE ZERO 絶対零度 2017』は、同劇場のオープニング・シリーズとして1998年に上演された『ABSOLUTE ZERO』の再演となる。これについて永井は「勅使川原さんはコンテンポラリーダンスの第一人者であり、これほど日本でオリジナル性のあるダンサー・振付家はいない」と絶賛。野村は「世田谷発の作品が世界各国を周り、18年ぶりに戻ってくることを誇らしく思う」と期待を寄せる。
平家物語を題材に木下順二の不朽の名作『子午線の祀り』(1979年初演、音楽:武満徹)は野村自身の演出・主演で上演。99年、2004年に野村自身も平知盛役で出演しているが、今回の上演について野村は「戯曲を解体し、新たなキャスト・演出で再構築したものをお見せしたい」と意気込みを語る。
同劇場の今後の展開について野村が「ほかでは観られないものが観られる劇場という方向性は死守したい」と語ると、永井は「独自のコンセプトを守りながら、これからはほかの公共劇場と組んでいく、一緒に創っていくこともありうると思っている」と続けた。
世田谷パブリックシアター 開場20周年記念プログラムの詳細は下記URLでご確認ください。
http://setagaya-pt.jp/performances/2017lineup.html