新垣有希子(ソプラノ)

表情や息づかいまで感じとっていただきたい

©Yoshinobu Fukaya/aura.Y2

 横浜みなとみらいホール小ホールの「気軽にオペラ!」は、若い才能を見つけるには最適のステージ。ほど良いサイズの空間で歌声がそれはスムーズに花開く。この4月、プッチーニの《ラ・ボエーム》でお針子ミミを演じるソプラノ、新垣有希子に抱負を尋ねてみた。
「今はイタリアのミラノ在住です。2009年までローマに留学し、その後、国境の街ボルツァーノに移り住んで、ドイツ語のオペラも積極的に学びました。そのお陰でリヴォルノやピサで《魔笛》のパミーナを演り、オーストリアで《指環》のヴォークリンデを4年続けて歌ったり。イタリアへの留学生としては異端児でしょうか? いろんな種を蒔いて収穫したいという気持ちがありました」
 いえいえ。プッチーニのヒロイン役は、風情は可憐でも、音楽的に必要なのは厚くて豊かな声音。ドイツものにも対応できるような芯のしっかりした響きが求められる。《ラ・ボエーム》のミミはその代表格だろう。
「ミミは東京芸大の学生の頃からの憧れの役でした。ただ、私は長い間、リリコ・レッジェーロ(軽めの声質)で歌ってきたこともあり、リリックな中音域が要るミミを受けるべきか、悩みました。でも、数年前にジェルメッティの指揮で《トゥーランドット》のリューを歌わせていただいたことや、イタリアの先生にも背中を押される形でこの大役をお受けしようと決めました。譜読みすると、若さを保ちながらドラマティックなフレーズを歌う難しさに突き当たります。プッチーニは楽想の指示をそれは細かく与えていますし。でも、大きな劇場だと犠牲になりがちな繊細なニュアンスが、今回のホールでは十分に表現できるようにも思います。表情や息づかいまで感じとっていただきながら、プッチーニのスケールの大きさも表現できればと願っています」
 国内でも東京二期会《イドメネオ》のイリアや日生劇場《フィガロの結婚》のスザンナなど大役を演じてきた新垣。イタリアでも良き指導者に恵まれて歩み続けている。
「ローマでマリエッラ・デヴィーアに師事した時のこと。“誰が聴いても完璧!” と思われる彼女が、『勉強しなくちゃ!』とおっしゃっていて、地道に練習される姿に頭が上がりませんでした。また、巨匠カラヤンと縁の深いジャネット・ペリーにもお世話になっていますが、お会いするたびに、『ユキコ、また新しい発声法を発見したの!』と新たなテクニックを教えていただけて…。お二人とも『すべて勉強で身につけたことよ、だから、貴女にもできるわ』と希望まで下さるのですね。先生方のその励ましを胸に、今回のミミ役も頑張ります!」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ 2017年4月号から)

小ホール・オペラシリーズ 気軽にオペラ! プッチーニ:《ラ・ボエーム》
4/7(金)、4/8(土)各日14:00 横浜みなとみらいホール(小)
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター045-682-2000
http://www.yaf.or.jp/mmh/

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