ジョナサン・ノット(指揮) 東京交響楽団

ノットならではの最高にユニークなプログラミング

 蜜月時代から黄金時代へ。ジョナサン・ノットと東京交響楽団は今もっとも聴き逃せないコンビといってもいいだろう。精彩に富んだ演奏に加えて、プログラムのおもしろさもこのコンビの魅力のひとつ。コンサート全体がまるでひとつの作品になっているかのように感じられることもしばしばある。
 5月の東京オペラシティシリーズは、まさにそんなノットの本領が発揮されたプログラムだ。映画音楽として広く知られるバーナード・ハーマン(パーマー編)の「タクシードライバー」で始まるというのも意表をついているが、これに続くのが現代イギリスを代表する作曲家のひとり、ハリソン・バートウィッスルによる「パニック」。副題に「アルト・サクソフォン、ジャズ・ドラムと管打楽器のための酒神讃歌」とある革新的な作品である(ドラムス:萱谷亮一)。このまったく背景が異なる両曲をつなぐのはサクソフォン(アルト・サクソフォン:波多江史朗)。映画『タクシードライバー』では、若き日のロバート・デ・ニーロが孤独な若者を演じていたが、その孤独感を際立たせていたのがサックスのソロだった。そこにバートウィッスル作品を続けるという発想がユニーク。バートウィッスルに『タクシードライバー』の世界が侵食していくのではないかと期待するのだが…。
 これに続くのが、ベートーヴェンの交響曲第8番というのも実にエキサイティング。こんなにも晴れやかで快活な作品をおしまいに置いたその意図は? 聴けば必ず発見があるはず。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ 2017年4月号から)

第97回 東京オペラシティシリーズ
5/13(土)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONYチケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp/