信頼厚きコンビが放つグラズノフの魅力
世界的指揮者が東京に押し寄せ、日本人指揮者も安穏としていられない時代に、大ベテラン小泉和裕がじわじわと活動の幅を広げている。1973年にカラヤン・コンクールで優勝後も着実に道を踏み固めてきた。共演歴が40年にもわたる都響からは、昨年、終身名誉指揮者に迎えられ、同じく長い関係にある九響でも音楽監督の任にある。仙台フィル(首席客演)、神奈川フィル(特別客演)でもポストを持ち、さらに今シーズンからは名古屋フィルの音楽監督もスタートした。オーケストラも生き残りをかけてしのぎを削る中、多くの楽団が小泉の力を求めている。
そんな小泉が1月に都響定期で2つの“5番”プログラムを披露する。ブルックナー「交響曲第5番」(Bシリーズ、1/10)に続き、Aシリーズ(1/23)はロシアものを中心とするプログラミング。前半はウェーバー《オイリアンテ》序曲からチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」へ。ソロを弾くヨシフ・イワノフは2003年、16歳でモントリオール国際コンクールを制覇、その2年後にはエリザベート王妃国際コンクールでも2位に入賞している。そろそろ30歳というところで、活動の幅も世界に広がっている。そしてグラズノフ「交響曲第5番」。まだまだ日本では知られているとは言いがたい作曲家だが、チャイコフスキーに劣らないメロディ・メーカーとしてあまたの名曲を残した。シンフォニストとしても8曲を書き、中でも5番は代表作だ。曲は荘厳に始まり、チャーミングに駆ける第2楽章にグラズノフお得意の甘美な緩徐楽章が続く。終楽章は勇壮なテーマを挟みつつ明るくダイナミックに締めくくられる。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ 2017年1月号から)
第824回 定期演奏会 Aシリーズ 2017.1/23(月)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp/