巨大な管弦楽作品が顕著なベルリオーズにあって、なかでもその大編成の楽器群と合唱ゆえ、なかなか上演機会に恵まれない劇的物語《ファウストの劫罰》。
日本では1980年代以降、ジャン・フルネ&都響、小澤征爾&新日本フィル、シャルル・デュトワ N響、若杉弘&大阪フィル、小林研一郎&日本フィルが演奏会形式で、小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ、ミシェル・プラッソン&東京フィルがオペラ上演しているのみ。海外からのオーケストラ来日公演でもセミヨン・ビシュコフ&パリ管が披露したのみにとどまっている。
しかし、奇しくもこの9月、高関健&東京シティ・フィルとユベール・スダーン&東京交響楽団で、相次いで演奏会形式で演奏されることとなった。
去る9月23日、ミューザ川崎シンフォニーホールでの東京交響楽団のリハーサルを取材した。
(2016.9.23 ミューザ川崎シンフォニーホール Photo&Movie:M.Terashi/TokyoMDE)
大編成のオーケストラを用いた音楽と言えばマーラーを思い浮かべるむきも多いだろう。特に、「千人の交響曲」と呼ばれる交響曲第8番の第2部は、ベルリオーズの《ファウストの劫罰》同様、ゲーテの『ファウスト』に題材をとり舞台上のオーケストラ以外に、別働隊となる金管楽器のバンダを設定しているが、こうした管弦楽法を確立したのは、近代管弦楽の父と言われるベルリオーズ。
音楽に目を向けると、有名な「ラコッツィ行進曲(ハンガリー行進曲)」のほかにも、「妖精の踊り」 「鬼火のメヌエット」など、コンサートでも単独で披露される名曲や、メフィストフェレスの『蚤の歌』、マルグリートの『トゥーレの王』『ロマンス(紡ぎ歌)』などのすばらしいアリアの数々も。
圧巻はクライマックスの「地獄落ち」。当時考えられる最高のオーケストレーションで劇的世界を描く。幕切れのマルグリートの「昇天」は心洗われる美しさ。
■東響創立70周年記念《ファウストの劫罰》リハーサルより
東京交響楽団創立70周年記念公演
ベルリオーズ:劇的物語《ファウストの劫罰》
コンサート形式(字幕付)
指揮:ユベール・スダーン
ファウスト:マイケル・スパイアーズ
メフィストフェレス:ミハイル・ペトレンコ
マルグリート:ソフィー・コッシュ ブランデル:北川辰彦
合唱:東響コーラス、東京少年少女合唱隊
東京交響楽団
第644回 定期演奏会
9/24(土) 18:00 サントリーホール
第57回 川崎定期演奏会
9/25(日) 14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp
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