欧州へ発信する、東西文化の連繋
創立70周年を迎えた東京交響楽団は、今秋ヨーロッパ公演を行う。指揮は音楽監督のジョナサン・ノット。そこで出発を控えた10月に、ツアーの演目が披露される。
バンベルク響の首席指揮者を長く務め、2017年からスイス・ロマンド管の音楽監督にも就任する世界的指揮者ノットは、東響の音楽監督の任期を26年まで延長した。彼は、異例の長期契約を結んだその意欲を存分に発揮し、頻繁に登場する中で急速に一体感を醸成。古典と現代の縦断を軸にした斬新なプログラミングを通して、精緻な東響に多彩な色調と重層的な綾を付与し、高い評価を得ている。その成果を広く知らしめるのが今回のヨーロッパ公演。事前のお披露目にも当然力が入る。
2つのプログラムの内、ミューザ川崎と東京オペラシティでは、武満徹「弦楽のためのレクイエム」に始まり、ドビュッシー「海」を経て、ブラームスの交響曲第1番に至るプログラムが演奏される。
武満の出世作「弦楽のためのレクイエム」は、1957年に東響が委嘱初演した作品。楽団の歴史と日本音楽の“看板”であり、現代曲を十八番とするノットの真骨頂を示す曲でもある。葛飾北斎の版画「神奈川沖浪裏」にインスパイアされた「海」は、東西文化を結ぶ意味をもつと同時に、当コンビの精緻な綾がモノを言う作品だ。そして今回の訪問地である中欧を代表するブラームスの1番。この超名作は「ノットが大切に温めてきた」とのことだし、彼ならば間違いなく清新なインパクトを与えてくれる。日欧のつながりを示す意義あるプログラムで、1音1音が耳を惹き付けるその演奏に酔いしれよう!
文:柴田克彦
(ぶらあぼ 2016年9月号から)
第121回 名曲全集
10/8(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
第94回 東京オペラシティシリーズ
10/9(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511
http://tokyosymphony.jp