4管編成“バレエ全曲版”で顕になるストラヴィンスキーの創意
間違いなく、いま聴くべき指揮者の一人だろう。ルネサンスから現代までの幅広いレパートリーに新しい光を当て、昨日作曲されたような新鮮さで聴かせてくれるフランソワ=グザヴィエ・ロトは、常に何かを期待させる指揮者でもある。自身が結成したアンサンブル「レ・シエクル(世紀)」を率いてラ・フォル・ジュルネに登場し、ここ数年はN響の「第九」公演や読響の定期演奏会も指揮。CDでもフランス近代の作品やストラヴィンスキーなどを作曲当時に立ち返って演奏するなど、冒険的な印象がますます強くなっている。
そのロトが、今度は都響の指揮台に初登場。4月の定期演奏会Aシリーズでは、およそ100年前にパリを湧かせたストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」と「ペトルーシュカ」を取り上げる。組曲版(短縮版)などで演奏されることも多い中、今回は共に4管編成のバレエ全曲版スコアを使用。楽器の使い方や音色のブレンドなど、当時としては斬新なアイディアが満載の2曲だが、作曲者がまさにその曲を生み出そうとしている時代について熟考し、楽器法などにおけるさまざまなアイディアを再検証するというロトだからこそ、全曲版スコアで演奏する意味があると言えるだろう。それゆえ聴き慣れているという人でも、あちらこちらで新しい発見があるはず。都響の洗練された音と色彩感が際立ち、鮮烈な演奏となるに違いない。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年4月号から)
第805回 定期演奏会 Aシリーズ
4/12(火)19:00 東京文化会館
問:都響ガイド03-3822-0727
http://www.tmso.or.jp