
それぞれが国内外の数々のコンクールで優勝、また日本音楽コンクールでは第1位を獲得という共通点を持つ鈴木愛美・小井土文哉・谷昂登。いまぜひ聴いておきたい3人のピアニストが一堂に会し、ピアノ協奏曲を披露する特別な企画「Concerto Festival」が開催される。小井土はラヴェルのト長調、谷はシューマンのイ短調、そして鈴木はベートーヴェンの第4番。それぞれの魅力が引き立つ作品を演奏する。
小井土「私がピアニストを志したきっかけの曲でもあり、はじめて取り組んだピアノ協奏曲でもあります。第2楽章が特に好きで、もし音楽に世界遺産があるとしたらこの曲は間違いなく入るだろうと思っています」
谷「もともとロシアの作品を弾くことが多かったのですが、ケルンに留学してからは意識的にドイツのレパートリーを演奏するようにしています。そしていまは特にシューマンの音楽との距離が縮まっているのを感じているところなのです。さまざまな苦悩を経て至る第3楽章終盤の高揚感は弾くたびに感動してしまいます」
鈴木「色々と候補はあったのですが、第4番の第2楽章が大好きで、ぜひ皆様の前で演奏したいという想いが強く、選びました。この楽章にはベートーヴェンの深い精神性が込められていると思いますし、弾くたびに強く惹かれるものがあります」
ピアノの様々な技法や表現がスケールの大きな音楽で楽しめるピアノ協奏曲は、オーケストラとのアンサンブルも魅力である。3名はそれぞれどのように楽曲と向き合っているのだろうか。
小井土「とくにラヴェルは室内楽的な要素が強く、各楽器のソリストの皆さんとのやりとりが多くありますし、オーケストラに散りばめられたモティーフに触発されながら演奏するところも多いので、親密さや緊張感といったものを楽しんでお聴きいただけたらと思っています」
谷「特に第2楽章は会話のように展開しますし、私も室内楽のイメージでアンサンブルをしたいと思っています。また、3楽章に関しては通常弾かれるよりゆっくりめになるのですが、シューマンの書いた通りのテンポで演奏した方が作曲家の凝らした様々な工夫の解像度が上がり、舞曲感も増すので、それを意識した音楽づくりをしていきたいです」
鈴木「ピアノ協奏曲を弾くたびにオーケストラの皆さんに支えていただいていることを実感します。とくにベートーヴェンは交響曲が素晴らしく、協奏曲でもオーケストラパートに魅力的な部分が多いので、それを味わい、また力をいただきながら演奏したいです」
今回3人のピアニストを支えるのは沼尻竜典が指揮する東京交響楽団だ。
谷「東京交響楽団の音色はピアノに深く寄り添い、またこちらの奏でる音に細かく反応して音楽を広げてくださるので、積極的に新しいアプローチに挑戦したいです」
小井土「沼尻さんはピアノもすばらしく弾ける方で、以前様々なアドバイスをいただいたことが印象に残っています。今回も新たな発見があると思うのでとても楽しみです」
鈴木「大好きな作品をすばらしい指揮者、オーケストラの皆さんとご一緒できること、尊敬するおふたりと同じ舞台に立たせていただけることがとてもうれしいです。会場となる東京オペラシティの美しい響きのなかで、より魅力的なベートーヴェンをお届けしたいと思います」
取材・文:長井進之介
(ぶらあぼ2026年7月号より)
鈴木愛美・小井土文哉・谷 昂登 Concerto Festival
2026.9/2(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジェスク音楽文化振興会03-3499-4530
https://jesc-music.org

長井進之介 Shinnosuke Nagai
国立音楽大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学に交換留学。アンサンブルを中心にコンサートやレコーディングを行っており、2007年度〈柴田南雄音楽評論賞〉奨励賞受賞(史上最年少)を機に音楽ライターとして活動を開始。現在、群馬大学共同教育学部音楽教育講座非常勤講師、国立音楽大学大学院伴奏助手、インターネットラジオ「OTTAVA」プレゼンターも務める。
X(旧Twitter) https://x.com/Shinno1102
Instagram https://www.instagram.com/shinno_pf/
