没後200年に先がけて、大阪・住友生命いずみホールでベートーヴェンを特集する2シリーズが始動!

上段左より:堀 朋平 ©樋川智昭/鈴木愛美 ©井村重人/小菅 優 ©Takehiro Goto/樫本大進 ©Keita Osada(Ossa Mondo A&D)/クラウディオ・ボルケス ©Peter Adamik
下段左より:山田和樹 ©Yoshinori Tsuru/ゲヴァントハウス弦楽四重奏団 ©Konrad Stoehr/アブデル・ラーマン・エル=バシャ ©Marco Borggreve/ソン・ミンス ©Shin-joong Kim_MOC

 住友生命いずみホールは、ベートーヴェンの没後200年となる2027年に先駆けて、2つの企画を発表した。2026年度のメインシリーズ「走りだす、ベートーヴェン」と、翌年度にまたがるピアノ・ソナタ全曲演奏会「彗星 8つの軌道」だ。4月にはこれらの企画についての記者会見が行われ、音楽学者でいずみホール音楽アドバイザーの堀朋平と、「彗星〜」に出演するピアニストの鈴木愛美が登壇。それぞれのラインナップや公演への抱負を語った。

 「『走りだす、ベートーヴェン』というタイトルには2027年へ向けて走り出すという意味に加え、もう1つは後期の円熟期にあるベートーヴェンではなく、20代、30代の晴れた青空を見るかのような若いルートヴィヒの姿を追いかけていきたい、という意味が込められています。一例として、今回は宗教声楽曲の指揮を山田和樹さんにお願いしましたが、こういう時に必ず名前が挙がるのが代表作として知られる後期の『ミサ・ソレムニス』。でも今回は、初期から中期にかけてのもっと鮮烈でさわやかなベートーヴェンを聴きたいということをリクエストして、山田さんが応じてくださったのがシリーズの核とも言える『ミサ曲 ハ長調』でした」

 そう語るのは両シリーズの企画・監修を務める堀朋平。ピアノ三重奏曲第7番「大公」など、一部後期の作品を織り交ぜながらも、創意に溢れた中期の作品群に光を当てるという。軸となるのは、小菅優が彼女自身の室内楽シリーズに樫本大進、クラウディオ・ボルケスを迎える「ピアノ三重奏」(6/30)、山田和樹指揮、関西フィルハーモニー管弦楽団、東京混声合唱団ほかによる「ミサ曲」(27.1/16)、そしてゲヴァントハウス弦楽四重奏団による「弦楽四重奏」(2/10)の3公演。いずれもアーティストとホールの密接な関係が活かされたオリジナル企画だ。

 一方「彗星 8つの軌道」はベートーヴェンの全32曲のソナタから、堀が作成したプログラムを国内外の8人のピアニストが選び、リレー形式で演奏するというもの。堀によれば「彗星=Komet」とは、18〜19世紀のドイツ語圏で「予測を超えた力」や「歴史を動かす力」を表す比喩として多く用いられた言葉で、ベートーヴェンの音楽自体がそのように例えられたこともあったという。一番手として登場する鈴木愛美は、2024年、第12回浜松国際ピアノコンクールで日本人として初の第1位に輝いた超新星だ。今年度は彼女(26.7/23)とアブデル・ラーマン・エル=バシャ(12/10)、ソン・ミンス(27.1/26)による3公演が行われる。

 記者会見の席上、鈴木は自身が弾くプログラムについて、「いずみホールでの初めてのリサイタルということもあって、私にとって特別な作品である第32番が入ったプログラムを選びました。ほとんど即決でした」と語った。多くのピアニストが仰ぎ見る、ベートーヴェン最後のピアノ・ソナタ。鈴木はこの曲をレパートリーとする、現在最も若いピアニストのひとりと言えるかもしれない。

 「人間や宇宙といった大きなものに向かっているような作品で、弾くたびに新しい世界が見えてくる。弾き続ければ答えにたどり着けるといったものではないけれど、いつか第30番、31番とこの32番でリサイタルを行いたいというのが私の夢。今回は堀さんに組んでいただいたプログラムに、自分なりの物語を見つけて演奏したい」と声を弾ませる。

 2つのシリーズで描く2026年最新のベートーヴェン。多彩な出演陣による演奏は、それぞれの作品の持つ多様性と普遍性を鮮やかに浮かび上がらせることだろう。いずみホールならではの聴き応えに溢れたステージが楽しみだ。

文:逢坂聖也

(ぶらあぼ2026年7月号より)

★走りだす、ベートーヴェン
小菅 優 いずみ室内楽シリーズ Vol.3 希望

2026.6/30(火)19:00 
山田和樹 プロフェッション・シリーズ Vol.1 
2027.1/16(土)16:00 10/2(金)発売

ゲヴァントハウス弦楽四重奏団
2027.2/10(水)19:00 10/2(金)発売

★ベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲シリーズ 彗星 8つの軌道
【Vol.1】鈴木愛美

2026.7/23(木)19:00
【Vol.2】アブデル・ラーマン・エル=バシャ

12/10(木)19:00 8/7(金)発売 
【Vol.3】ソン・ミンス

2027.1/26(火)19:00 10/2(金)発売 
大阪/住友生命いずみホール
問:住友生命いずみホールチケットセンター 06-6944-1188

https://www.izumihall.jp


逢坂聖也 Seiya Osaka

大阪芸術大学卒業後、大手情報誌に勤務。映画を皮切りに音楽、演劇などの記事の執筆、配信を行う。
2010年頃からクラシック音楽を中心とした執筆活動を開始。現在はフリーランスとして「ぶらあぼ」「ぴあ」「音楽の友」などのメディアに執筆するほか、ホールや各種演奏団体の会報誌に寄稿している。
大阪府豊中市在住。