東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.1

 10月2日から東京二期会オペラ劇場で上演されるR.シュトラウスのオペラ《ダナエの愛》。舞台での完全上演が日本初演となる今回、演出を担うのが映画監督でもある深作健太。
 8月24日から開始された稽古もいよいよ大詰め。来週からはマエストロ、準・メルクルも参加し音楽稽古が始まるが、ここでは、稽古初日に深作から語られた演出プラン・コンセプトを中心にご紹介します。
(取材・文:編集部 Photo:M.Terashi/TokyoMDE)

■あらすじ
黄金の雨に変身し、処女ダナエと交わる主神ユピテル。触れる物すべてを黄金にしてしまう王ミダス。
 破産寸前の国の王女ダナエは、天からの黄金に愛撫される夢を見、その幸福感が忘れられない。そこに国の窮乏を救う婿として到着するミダスは〈王の使者〉に変装し、また、ダナエを物にしたいユピテルは〈王〉に変装して現れるが、ダナエは本物のミダスの真実の思いを知り、ミダスを結婚の相手として選ぶ。それを知ったユピテルはミダスに取引を持ちかける。自分の授けた位と富を選ぶか、それとも、愛を選び、元の貧しい驢馬挽きに戻るか・・・(檜山哲彦)

■深作健太が語る演出コンセプト
 この作品には、愛=リーベ、黄金と愛という2つの宝物があります。この作品が創られた第2次大戦中、また2つの大戦の時代、男性原理のなかにあって、多くのシュトラウス作品には女性の名前がついている。たとえば、《サロメ》《エレクトラ》《アラベッラ》・・・
《ばらの騎士》にしてもオクタヴィアンは女性が演じる。ドイツ語の音楽=Musikも女性名詞ですね。どこかシュトラウスが女性にこだわっていた感がある。
 そうした戦争の時代にシュトラウスが何と戦っていたのか?70年前に何を訴えようとしていたのか?
 戦後70年の日本も、がれきの中から復興してきた。ただ、高度成長、経済の豊かさに反して、今の幸福、安定の裏返しで何かを失っているのも事実。

 第3幕で宮殿が崩壊し瓦礫になる。第2次大戦後のドイツの、そして日本の瓦礫の世界に、もうひとつ、現代の日本の瓦礫の世界。それらを通じて復興の物語を表現したい。

 シュトラウスは無神論者だったのではないかと思うほど、人間が一番大切にしなければならない家庭の愛とか、そういった、救済だとか大きな愛ではない、小さな愛にこだわっている。
 黄金はお金、それを求めることは死しか生まない。けれども「ダナエの愛」は小さな生命を生む愛。
 愛とは何か?

 第3幕冒頭で出てくる「石」という言葉を瓦礫ととらえている。それは、黄金とは対局のもの、犠牲によってうまれたものだが、そこからまた花をさかせ、再生する。
 「復興への希望」。それがいまの日本で希望に満ちたものとして上演できたらと思う。そして、シュトラウスの音楽のもつ、ドイツ的な壮大な部分と、軽やかな美しい世界を描けたらと考えている。

 演出家というのは何かやりたくなる。自分自身いろんなドイツ系の演出家が好きですが、今回日本初演ということもあり、真っ向から美しい音楽を聴かせたい、きちんとした形で作品を伝えたいという思いで向き合っている。外連は捨てています。奇をてらった演出はしません。

■第1幕の演出プラン・メモ
・ポルックス王の地下墓所
・神話の世界というよりも、ウィーン工房風の、クリムトが描こうとした世界
・ベッドの形をした墓
・ダナエは、母がまつられている墓のそばにずっと幽閉されている
・天窓があいており、明かりと黄金が降り注ぐ
・母のおなかの中のような場所

R.シュトラウス
オペラ《ダナエの愛》全3幕 <舞台上演日本初演>
日本語字幕付き原語(ドイツ語)上演

2015年10月2日(金) 18:30 3日(土) 14:00 4日(日) 14:00 東京文化会館 大ホール

指揮:準・メルクル
演出:深作健太
装置:松井るみ
衣裳:前田文子
照明:喜多村 貴

ユピテル 小森輝彦(10/2、4)大沼 徹(10/3)
メルクール 児玉和弘(10/2、4)糸賀修平(10/3)
ポルクス 村上公太(10/2、4)高田正人(10/3)
ダナエ 林 正子(10/2、4)佐々木典子(10/3)
クサンテ 平井香織(10/2、4)佐竹由美(10/3)
ミダス 福井 敬(10/2、4)菅野 敦(10/3)
ゼメレ 山口清子(10/2、4)北村さおり(10/3)
オイローパ 澤村翔子(10/2、4)江口順子(10/3)
アルクメーネ 磯地美樹(10/2、4)塩崎めぐみ(10/3)
レダ 与田朝子(10/2、4)石井 藍(10/3)
4人の王&4人の衛兵 前川健生(全日)鹿野浩史(全日)杉浦隆大(全日)松井永太郎(全日)

合唱: 二期会合唱団
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団

S13,500 A12,500 B10,000 C¥8,000 D¥6,000 学生席¥2,000
二期会チケットセンター   
03-3796-1831 http://www.nikikai.net/

●東京二期会オペラ劇場《ダナエの愛》
http://www.nikikai.net/lineup/danae2015/

■関連記事
速報!! 東京二期会《ダナエの愛》GPレポート
東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.6
東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.5
東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.4
東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.3
東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.2
東京二期会《ダナエの愛》稽古場レポートvol.1
深作健太(演出)インタビュー〜(ぶらあぼ + Danza inside2015年9月号から)

  • La Valseの最新記事もチェック

    • プッチーニ《蝶々夫人》 | 岸純信のオペラ名作早わかり 〜新時代のオペラ作品ガイド 第3回 
      on 2019/08/18 at 22:30

      text:岸 純信(オペラ研究家) 【あらすじ】 明治期の長崎を舞台に、大和撫子の蝶々さんが米国海軍士官のピンカートンと結ばれるが、帰国した夫はアメリカ人と結婚。彼を待ち続けた蝶々さんは、軍艦が戻ってきたその日、子どもも手放すよう言われて「抗議の死」を選ぶという悲劇の物語。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 《蝶々夫人 Madama Butterfly》は、日本人に「日本の美学を改 [&#8230 […]