
今年初頭のアリス・アデールの来日公演は大いに話題を呼んだが、勝るとも劣らない「幻のピアニスト」が来日する。クリスチャン・ブラックショウ、1949年英国生まれ。ロンドン王立音楽院や旧ソ連時代のレニングラード音楽院に学び、さらにクリフォード・カーゾンに師事、と着実にキャリアを積み上げるも1980年代から約20年演奏活動から遠ざかる。妻が逝去し、残された3人の娘の養育のためだったという。
復活後は2012年、17年に続く9年ぶりの来日。前回の「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全曲演奏会」は全公演完売の盛況だった。今回はモーツァルト「アダージョ ロ短調」、シューマン「交響的練習曲」、シューベルトのソナタ第21番。陰翳と情感の濃いプログラムだ。シューベルトのソナタは近作アルバム『時の一瞬』で聴けるが、自然な語り口に高い熱量をひそませ、一音一音の振る舞いが自ずとことばとなって立ち上がる秀演。ライブという「一瞬」を、このピアニストと共有したい。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2026年7月号より)
オフィス山根 presents〈東京ピアノ・シリーズ〉 クリスチャン・ブラックショウ ピアノ・リサイタル
9/10(木)19:00 浜離宮朝日ホール
問:オフィス山根 contact@officeyamane.net
https://officeyamane.net

矢澤孝樹 Takaki Yazawa
1969年山梨県塩山市(現・甲州市)生。慶應義塾大学文学部卒。水戸芸術館音楽部門主任学芸員を経て現在ニューロン製菓(株)及び(株)アンデ代表取締役社長。並行して音楽評論活動を行い、『レコード芸術online』『音楽の友』『モーストリークラシック』『ぶらあぼ』『CDジャーナル』にレギュラー執筆。朝日新聞クラシックCD評選者および執筆者。CD及び演奏会解説多数。著書に『マタイ受難曲』(音楽之友社)。ほか共著多数。
