沼尻竜典&新日本フィルのオール・ラヴェル・プロに久末航が登場!

左:沼尻竜典 ©Ayane Shindo
右:久末 航 ©Janine Guldener

 「マ・メール・ロワ」「クープランの墓」「左手のためのピアノ協奏曲」「ダフニスとクロエ」第2組曲という、ラヴェル芸術の精髄をたどるプログラムである。

 指揮は沼尻竜典、ソリストは2025年エリザベート王妃国際音楽コンクール第2位の久末航。ラヴェルの緻密な構成と豊かな色彩を味わえる公演となりそうだ。

 沼尻竜典は、オペラから近現代作品まで幅広いレパートリーで知られるが、ラヴェルでも成功を収めている。2022年、東京交響楽団とのオール・ラヴェル・プログラムで聴かせた「マ・メール・ロワ」の清澄な表現や、「ダフニスとクロエ」全曲の熱気に満ちた高揚は高い評価を受けた。2023年の新国立劇場《子どもと魔法》でも、繊細な音色と巧みなバランス感覚でまとめ上げた。ラヴェル特有の複雑な声部や管弦楽法を明晰に描き分けながら、温かみある音を引き出す手腕にも定評がある。

 久末航も、パスカル・ドゥヴァイヨンらのもとで培った音色感覚と構築力により、早くからラヴェルを得意としてきた。2018年、筆者が聴いた紀尾井ホールでの「夜のガスパール」では、きらめく音の連なりと鋭利なリズムが鮮烈な印象を残した。

 今回演奏される「左手のためのピアノ協奏曲」は、第1次大戦で右腕を失ったヴィトゲンシュタインの委嘱作。超低音で始まる神秘的な序奏、ジャズの影響を帯びた鋭いアレグロ、そして左手だけとは思えぬ長大なカデンツァなど、ラヴェル晩年の個性が凝縮されている。久末のしなやかなピアニズムと、沼尻&新日本フィルの精妙なオーケストラの響きによって、この作品の多面的な性格と劇的な展開が、鮮やかに描き出されることだろう。

文:長谷川京介

(ぶらあぼ2026年7月号より)

沼尻竜典(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだクラシックへの扉 第42回
2026.9/11(金)、9/12(土)各日14:00 すみだトリフォニーホール
問:新日本フィルチケットボックス03-5610-3815

https://www.njp.or.jp


長谷川京介 Kyosuke Hasegawa

ソニー・ミュージックにてクラシックCDの企画・制作を担当するプロデューサーとして勤務。
退職後は音楽評論家として活動し、「ぶらあぼ」「音楽の友」「毎日クラシックナビ・速リポ」などにコンサート評や記事を執筆。
コンサート・プログラムやCD解説の執筆も手がける。
ミュージック・ペンクラブ音楽賞選考委員。個人ブログ「ベイのコンサート日記」は年間40万回を超えるアクセスを集めている。