
5月のN響定期Cプロの指揮はアンドリス・ポーガ。アルヴィド&マリス・ヤンソンス父子やネルソンス等の名匠に続くラトビア出身の彼は、2010年スヴェトラーノフ国際指揮者コンクールで優勝後、各地の著名楽団に客演し、ラトビア国立響の音楽監督のほか、パリ管やボストン響のアシスタント指揮者を務め、ミュンヘン・フィルのアジア・ツアーも担当。21年にはスタヴァンゲル響の首席指揮者に就任している。N響とは今回が5回目の共演。この数字が信頼度の高さを何より物語っている。
プログラムも目を奪う。まずは後半のショスタコーヴィチの交響曲第4番。斬新な音響とグロテスクな音楽が連なるマーラー風のこの曲は、いわゆる「プラウダ批判」の影響で、日の目を見るまでに25年を要している。しかしそのことが証明するモダンで革新的な内容から、ショスタコーヴィチの最高傑作とみる向きも多く、近年は最前線の指揮者が積極的に取り上げている。この作曲家の作品を得意とし、的確なバランスとスケールの大きさを共生させるポーガが、これをいかに表現するのか? まさに興味津々だ。加えて作曲者の全交響曲中最大の編成を要する本作は技術的にも至難なだけに、N響の底力が存分に発揮されるであろうし、同楽団の演奏で聴いてみたい作品でもある。
前半はポーガと同じラトビア出身の作曲家ヴァスクスへの共同委嘱作品「感謝の歌」の日本初演。希望と痛みが共存するヴァスクスの音楽は訴求力が強く、ポーガもCDで快演を展開している。ゆえにここもシンパシーに満ちた音楽が聴く者の心を強く打つに違いない。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2026年5月号より)
アンドリス・ポーガ(指揮) NHK交響楽団 第2065回 定期公演 Cプログラム
2026.5/29(金)19:00、5/30(土)14:00 NHKホール
問:N響ガイド0570-02-9502
https://www.nhkso.or.jp/

柴田克彦 Katsuhiko Shibata
福岡県生まれ。音楽マネージメント勤務を経て、フリーの音楽ライター・評論家&編集者となる。雑誌、コンサート・プログラム、Web、宣伝媒体、CDブックレットへの、取材・紹介記事や曲目解説等の寄稿、プログラム等の編集業務を行うほか、講演や講座も受け持つなど、幅広く活動中。著書に『山本直純と小澤征爾』(朝日新書)、 『1曲1分でわかる! 吹奏楽編曲されているクラシック名曲集』(音楽之友社)。


