ミハイル・プレトニョフ(指揮) 東京フィルハーモニー交響楽団 リムスキー=コルサコフ:歌劇《不死身のカッシェイ》演奏会形式

プレトニョフの指揮で聴くロシアの隠れた傑作オペラ

ミハイル・プレトニョフ ©上野隆文
ミハイル・プレトニョフ ©上野隆文

 リムスキー=コルサコフが歌劇の大家だったという事実は、日本ではほとんど知られていないのではなかろうか。生涯に15作品も書いているのだから立派だが、「熊蜂の飛行」や《サトコ》のアリア、《金鶏》や《見えざる都市キーテジと聖女フェヴローニャの物語》の組曲版が時折プログラムを彩る程度で、オペラ全曲上演の機会などは滅多にない。
 今年4月から東京フィルの特別客演指揮者に就任したプレトニョフが、就任後初めて壇上に立つ。その演目がR=コルサコフのオペラ《不死身のカッシェイ》(演奏会形式)だ。プレトニョフはこれまでにも、グラズノフやスクリャービンの珍しい作品を上演しており、ロシア音楽の豊かさを伝えることに積極的だった。オペラ指揮者としてもボリショイ歌劇場来日公演の《スペードの女王》で、実力は証明済み。
 カッシェイとはロシア民話にたびたび登場する悪役キャラクターで、ストラヴィンスキーの「火の鳥」でおなじみだろう。両者はストーリーは異なるが、囚われた王女の解放という点で似ており、初演年も近い(《カッシェイ》1902年、「火の鳥」1910年)。「火の鳥」は師匠R=コルサコフに捧げられており、実際《カッシェイ》の濃厚なオーケストレーションは所々「火の鳥」を連想させる。ここには師弟間に流れる知られざる水脈があるのかもしれない。
 プレトニョフは来日直前、自ら率いるロシア・ナショナル管でも《カッシェイ》を上演する(こちらは「火の鳥」と抱き合わせたプログラム)。東京公演にもその主要歌手が参加、さらに東京フィルが日頃から共演する新国立劇場合唱団が加勢する。盤石の布陣だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年10月号から)

10/9(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京フィルチケットサービス03-5353-9522
http://www.tpo.or.jp