
40年以上のキャリアを誇り、ウィグモア・ホールの常連である英国のピアニスト、ベンジャミン・フリスがベートーヴェン・ピアノソナタの夕べ「初期、中期、後期より」と題したリサイタルを行う。彼は巨匠ピアニストのパウル・バドゥラ=スコダに、「フリスのベートーヴェンは本物だ」と絶賛された実力派。今回はソナタ第14番「月光」、第21番「ワルトシュタイン」、第30番でその真価を発揮する。
「月光」は3連符分散和音の印象的なオープニングから曲のなかに自然に招かれ、この作曲家のロマン豊かな曲想に心が揺さぶられる。「ワルトシュタイン」はベートーヴェンを支援し続けたワルトシュタイン伯爵に捧げた作品で、ドラマ性にあふれ、華麗な奏法が全編を覆う。第30番は後期3大ソナタのひとつで、舞曲のリズムや変奏が盛り込まれている。それらをフリスは深い洞察力と長年の経験、そしてベートーヴェンへの敬愛の念を抱きながら、各曲の神髄に迫るピアニズムを聴かせる。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2026年3月号より)
第568回日経ミューズサロン ベンジャミン・フリス
ベートーヴェン・ピアノソナタの夕べ「初期、中期、後期より」
2026.3/11(水)18:30 日経ホール
問:日経公演事務局03-5227-4227
https://art.nikkei.com

伊熊よし子 Yoshiko Ikuma
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。インタビューの仕事も多く、多い年で74名のアーティストに話を聞いている。近著は「モーツァルトは生きるちから 藤田真央の世界」(ぶらあぼ×ヤマハ)。
http://yoshikoikuma.jp/

