
NHK交響楽団の特別コンサートマスターを今年3月までつとめ、“まろ”の愛称で親しまれる篠崎史紀は、活動の領域をさらに拡大しながら、現在も多忙な日々を送っている。
その篠崎の故郷は、18歳でウィーンに留学するまでの若き日を過ごした北九州市だ。現在も結びつきは強く、この地で開催される北九州国際音楽祭では、篠崎がコンサートマスターをつとめる「マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ」のコンサートが、毎年の目玉企画となっている。
頭文字が「Maro」となる、指揮者なしのこのオーケストラは、優秀な若手演奏家を核とする「ライジングスター組」と、北九州市出身者を含む国内主要オーケストラのコンサートマスターや首席奏者たちからなる「マイスター・アールト組」で構成される。
今年の曲目は、なんとベートーヴェンの「第九」。ソリストと合唱は、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」や「東京・春・音楽祭」で活躍する、東京オペラシンガーズが担当する。
声楽を加えた編成の大きな作品だけに、指揮者なしでの演奏はきわめて珍しい。全体をリードするコンサートマスターの手腕と、出演者全員が室内楽のように互いを聴きあい、思いを感じあうことが、成功の鍵となる。若手もベテランも、篠崎が篤く信頼し、共演を重ねてきた人々だからこそ、道は開ける。熱く輝く「歓喜の歌」に期待したい。
文:山崎浩太郎
2025北九州国際音楽祭
マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ
2025.11/23(日・祝)15:00 北九州市立響ホール
14:15~ プレ・ステージコンサート
出演
マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ(コンサートマスター:篠崎史紀)
東京オペラシンガーズ(ソリスト・合唱)
プログラム
ベートーヴェン:
序曲《コリオラン》op.62
交響曲第9番 ニ短調 op.125「合唱付き」
問:響ホール音楽事業課093-663-6661
https://www.kimfes.com

山崎浩太郎 Kotaro Yamazaki
1963年東京生まれ。演奏家の活動と録音をその生涯や同時代の社会状況において捉えなおし、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。著書は『演奏史譚1954/55』『クラシック・ヒストリカル108』(以上アルファベータ)、片山杜秀さんとの『平成音楽史』(アルテスパブリッシング)ほか。
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