第4代音楽監督ロレンツォ・ヴィオッティが始動

東京交響楽団は10月7日、2026/27シーズン(26年4月~27年3月)のプログラムを発表した。1946年の楽団創立から80年を迎える記念すべき新シーズンは、第4代音楽監督ロレンツォ・ヴィオッティとの協働をスタートする特別な1年となる。
ヴィオッティは1990年スイス生まれ。フェニーチェ劇場音楽監督などオペラ指揮者として活躍した故マルチェッロ・ヴィオッティを父に持つ。この7月までオランダ国立歌劇場、ネーデルランド・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めており、パリ・オペラ座をはじめとする欧州主要歌劇場のほか、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管などにも客演。オペラと交響曲の両分野において才能を発揮している。
東響とのシーズン開幕を控え、ヴィオッティは次のメッセージを寄せている。
親愛なる皆様へ
この名誉あるオーケストラの音楽監督として迎えていただけることを、心より嬉しく思い、深い感謝の気持ちを抱いております。
私たちが共に過ごす初めてのシーズンは、音の多様性と音楽的な豊かさに満ちたものとなることを願っております。
皆様に私たちのプログラムをお届けできることを楽しみにしており、毎年数週間にわたり、皆様の文化に触れる機会を得ることを心より楽しみにしています。
日本は常に温かく迎えてくださる国であり、私はその歓迎に感謝するとともに、この新たな冒険を共に始めることができることを大変嬉しく思っております。
東京交響楽団第4代音楽監督
ロレンツォ・ヴィオッティ
5月の就任披露記念公演は2プログラム。5月16日は、東響が1947年の第1回定期演奏会で演奏したベートーヴェンの交響曲第1番と、ヴィオッティが主要なレパートリーと位置付けるマーラーの交響曲第1番「巨人」。5月23日、24日は、現代最高のソプラノのひとり、マリーナ・レベカをソリストに招くR.シュトラウス「4つの最後の歌」、そしてラヴェル「ダフニスとクロエ」をカップリング。他にも、ブラームス&ドヴォルザーク(7/18)、モーツァルト&シューベルト(9/13)、バッハ&ショスタコーヴィチ(10/11)といった組み合わせ、そして年末の「第九」まで、ロマン派を軸にシンフォニー指揮者としての真価を示すプログラムが展開される。
ヴィオッティは創立80周年記念公演にも登壇(9/19)。東響が1977年に日本初演したフランツ・シュミットのオラトリオ「七つの封印の書」を上演する。新約聖書『ヨハネの黙示録』を題材に、世界の終末と審判を、声楽ソリスト・合唱・オルガンを伴う壮大なスケールで描く20世紀屈指の傑作で、戦争や飢饉、地震や環境破壊といった現代社会が直面する問題に音楽を通して向き合う公演となる。この演奏会の1週間前には、ルイージ&N響が同じ作品の上演を予定しており、両者の音楽づくりの違いにも注目が集まるだろう。
記念シーズンの指揮者陣は多彩。桂冠指揮者のユベール・スダーンや名誉客演指揮者の大友直人をはじめ、東響初登場となるパブロ・エラス=カサドやデイヴィッド・レイランド、さらにオスモ・ヴァンスカといった国際的に活躍する実力派が名を連ねる。日本人では、武満作品&ベートーヴェン「第九」で合唱に光を当てる沼尻竜典、「未完成」「運命」「新世界より」の名曲三本勝負で初登場を飾る小林資典(もとのり)も楽しみだ。また、沖澤のどか、出口大地、熊倉優、大井駿らフレッシュな顔ぶれも多数。
ソリストでは、ワルシャワで開催中のショパンコンクールに出場しているケヴィン・チェンがショパンのピアノ協奏曲第1番を披露するほか、角野隼斗は、アンサンブル・アンテルコンタンポラン(EIC)の音楽監督を務めるピエール・ブリューズの指揮で自作を世界初演、さらにカプースチンのピアノ協奏曲第4番に挑む。加えて、小山実稚恵やマルティン・ガルシア・ガルシアといった、ショパンコンクールに入賞歴のあるピアニストの出演も見逃せない。
80年の歩みを礎とし、東京交響楽団はヴィオッティとともに次代へ歩み出す。記念すべき2026/27シーズンは、歴史を振り返りつつ新しい響きを創造する未来への出発点となるだろう。
文:編集部

東京交響楽団
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