
俊才ヴァイオリニスト、毛利文香が全3回のデビュー10周年リサイタル・シリーズを行っている。桐朋学園や慶應義塾大学、さらにはドイツで学び、数々の国際コンクールで受賞後、幅広く活躍している毛利は、高レベルの技術と知・情を兼備した表現力を持ち、音楽の本質を衒いなく表出する真の名手。10月の第2回ではピアノのアブデル・ラーマン・エル=バシャとのデュオを披露する。今年6月の第1回では師ミハエラ・マルティンと濃密なヴァイオリン二重奏を展開し、来年3月の第3回ではイザイの無伴奏ソナタ全曲を弾く予定なので、毎回形態が異なる。すなわちこれは、毛利の今を多角的に知ると同時に、同楽器の多面性を体感する好機となる。
今回は、モーツァルト、ベートーヴェン、シューマンのソナタとシューベルトの「幻想曲」が並ぶ王道プロ。深い精神性と色艶を併せ持つ巨匠エル=バシャとのコラボで、独墺ソナタの変遷をたどる意味深い内容でもある。ここはぜひ、当シリーズを「長く続く音楽人生に向けた覚悟」と語る毛利の妙演に耳を傾けたい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年9月号より)
毛利文香(ヴァイオリン) デビュー10周年 リサイタル・シリーズ
第2回 「巨匠と共演。多彩なるデュオ・リサイタル」
2025.10/10(金)19:00 Hakuju Hall
問:ノヴェレッテ050-6878-5760
https://www.novellette-arts.com

