前情報なく当盤冒頭のトッカータ第5番を聴いたら、現代音楽かと思うかもしれない。だがこれは17世紀初頭のローマで活躍した初期鍵盤音楽の巨人・フレスコバルディの音楽だ。2巻のトッカータ集などからバランス良く選曲され、その技とファンタジーのエッセンスが楽しめる。カプリッチォの驚嘆の対位法、トッカータの幻想と神秘性、「パッサカリアによる100のパルティータ」の変転する疾走感。オルガン演奏はこの作曲家の大胆不敵な和声を体感するには好適だ。軽井沢ヴィラセシリア音楽堂のザニン工房製イタリアオルガンを知り尽くした和田純子が、17世紀の前衛の真価を伝えてくれる。
文:矢澤孝樹
(ぶらあぼ2025年6月号より)
【information】
CD『G・フレスコバルディ:オルガン作品集/和田純子』
フレスコバルディ:トッカータ第5番、同第4番「聖体奉挙のために」、カプリッチォ「ルッジェーロのアリア」、同「カッコウ」、パッサカリアによる100のパルティータ 他
和田純子(オルガン)
録音研究室(レック・ラボ)
NIKU-9068 ¥3080(税込)