フィンランド出身の気鋭が、2021年9月から首席指揮者を務めるイギリスの名楽団を振った最新録音。3季目に入った両者の関係の深まりを反映した演奏でもある。とかく色々なことを言われる作品だが、ロウヴァリは純粋器楽交響曲としての音の綾を明確かつしなやかに表出している。すなわち、様々な動きを明瞭・的確に打ち出せば、凄みや悲劇性は自然に生まれるといった方向性。第2楽章は滑らかに疾走し、第3楽章のホルンのソロも柔らかく、第4楽章の木管の動きは瑞々しい。完成から70年以上経った曲にまとわりつく“澱”を取り払ったかのような快演。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2025年6月号より)
【information】
CD『サントゥ・コンダクツ・ショスタコーヴィチ/サントゥ=マティアス・ロウヴァリ&フィルハーモニア管』
ショスタコーヴィチ:交響曲第10番
サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮)
フィルハーモニア管弦楽団
Signum/東京エムプラス
XSIGCD 889 ¥3300(税込)