調布国際音楽祭2025 スペシャル座談会
鈴木優人 × 森下唯 × 上野耕平 × 市川紗椰

線路と鉄道愛は続くよ、どこまでも!

前列左より)鈴木優人、市川紗椰 後列左より)森下唯、上野耕平

 今年の調布国際音楽祭(6/21~6/29)のテーマは「Journey Through Music! 音楽の旅へ!」。旅といえば、鉄道。目玉公演のひとつ「鉄道×音楽 Take the “Keio” train」(6/28)に出演する、鉄道ファンとしても有名なサクソフォン奏者の上野耕平とモデルの市川紗椰(二人はNHK-FMの番組『×(かける)クラシック』のパーソナリティでもある)をゲストに迎え、同音楽祭エグゼクティブ・プロデューサー鈴木優人とアソシエイト・プロデューサーでピアニストの森下唯の4人が、鉄道愛・音楽愛を語り合った。

取材・文・構成:山田治生 写真:野口博

 6月28日の公演では、鉄道唱歌に始まり、駅の発車メロディを使った作品や「A列車で行こう」など、マニア心をくすぐるさまざまなプログラムが組まれている。

鈴木 調布国際音楽祭では、これまでにいろんな趣味層の方にも楽しんでいただけるコラボ企画ということで、ゲーム音楽や将棋を取り上げてきましたが、今回は満を持しての鉄道企画です!
 僕自身が中高生の頃、乗り鉄でした。耕平くんにはいつもマニアックな鉄道の話を教えてもらっていますが、僕だけが聞くのはもったいないということで、今回は耕平くんと市川さんに来ていただいて『鉄道×音楽』のコンサートをしたいと考えました。それでも街の音楽祭ですから、鉄道ファンだけのイベントにしないように、今回は、特に鉄道好きというわけではない森下くんとヴァイオリニストの廣津留すみれさんにも出演していただきます。

まず、鉄道が好きになったきっかけを教えてください。

上野 僕は、生まれ育った家の目の前が常磐線の線路だったので、音楽に出会うより前から鉄道が好きでした。乗るのも好きですが、鉄道模型も集めています。

市川 小さい頃から乗り物全般が好きで、鉄道の路線図を見るようになりました。私はアメリカ育ちだったので、最初はアメリカの鉄道ですね。

鈴木 中学生のとき、鉄研(鉄道研究会)では物足りない同級生が作った鈍研(鈍行研究会)に入りました。中高生の頃は、休みのたびに青春18きっぷを買って鈍行で旅行していました。全国のJR路線の8割くらいは乗ったと思います。時刻表を見るのが大好きで、時刻表から全部写して旅のプランニングを書いて作りました。その後、しばらく遠ざかっていたのですが、耕平くんがNゲージの鉄道模型をくれて、また、鉄道愛に火がつきました!

今回のコンサートの聴きどころは、どんなところでしょうか。

鈴木 まず、森下くんに19世紀フランスの作曲家、アルカンの練習曲「鉄道」を弾いていただきます。

森下 超絶技巧で有名なアルカンですが、この作品も非常に難しいエチュードです。かなり描写的で、汽笛の音とか鉄橋を渡るシーンなど、聴くとわかりますよ。

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鈴木 「駅メロディによる即興曲」もあります。それから、歴代の新幹線のチャイムの演奏もします。“黛チャイム”の生演奏もあります。

市川 えー、怖っ!

一同 (笑)

上野 国鉄からの委嘱で黛敏郎さんが作られたものの、評判が悪くて2、3年で使われなくなったんですよね。

市川 前衛的過ぎて、ちょっと怖い音楽なのです。カッコいいんですけど。

鈴木 クラシック・ファンにとっては、黛さんが作ったというところが垂涎ポイントです。そのほか、“元祖鉄道オタク”のドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」をサックスで演奏していただきます。

上野 今回演奏するのは、皆さんご存知の第2楽章〈家路〉です。

市川 我々の番組『×クラシック』のエンディングで毎週流れている曲です。このコンサートに来たら、生で全曲聴けますよ!

上野 あとは「鉄道唱歌-900番台」という曲を演奏します。「鉄道唱歌」をもとに山中惇史さんに作ってもらいました。900番台というのは、量産先行車とか、試作車につける番号で、未来につながるようなという意味で900番台をタイトルにつけました。曲のなかで、列車のモーターの音をサックスで演奏したりもします。

鈴木 そして最後に、挾間美帆さんに新編曲していただいた「Take the “A” Train(A列車で行こう)」を発表したいと思っています。廣津留さんには、この作品のほか、発車メロディや新幹線チャイムにも入ってもらいます。

鉄道×音楽  Take the “Keio” train! プログラム
♪アルカン:練習曲「鉄道」Op.27
♪三留研介、若林剛太(萩森英明編):駅メロディによる即興曲
♪多梅稚(山中惇史編):「鉄道唱歌-900番台」
♪ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95「新世界より」第2楽章(家路)
♪挾間美帆編:Take the “A” Train(新編曲) ほか

大盛り上がりだった昨年の「将棋×音楽」公演。今年の演出も工夫を凝らしたものになりそう。

ちなみに、皆さん、好きな路線や電車は?

市川 都内でしたら、都営浅草線が好きですね。車両がカッコいいし、乗り入れのために線路幅を合わせたりしているのです。全国でいうと富山地鉄かな。

上野 僕は、名鉄。名古屋駅の特別車専用ホームのベンチでコーヒー片手に電車を眺めている時間が好きです(笑)

鈴木 最初の旅で行った只見線の景色が忘れられないですね。あと青森県の五能線!

森下 僕は東急世田谷線が好きですね。

調布市の真ん中を走る京王線についてはいかがですか? 

市川 車両がきれいですよね。最近は、多摩センターのサンリオピューロランドに行くときに乗ります! キャラクターで駅を可愛くして、車両を盛り上げたりしています。

上野 京王というと、日本で唯一の馬車軌道が注目ポイントですね(笑)

*JR在来線など広く普及している狭軌、新幹線などで採用されている標準軌とは異なる1,372mmの線路の幅。都電の前身となる「東京馬車鉄道」がこれを採用していたところから、日本では馬車軌道と呼ばれるようになった。JRや大手私鉄の中でただ1社、京王線がこの珍しい軌間を採用している。

森下 沿線に住んでいる人は、何となく団結力が強いイメージがあります。

鈴木 高尾線の山に入っていくときの急な景色の変化が好きです。調布には、ほとんどの皆さんが京王線に乗ってやって来るので、今回は、その恩返しをしたいというのもあります。

音楽祭全体にも、鉄道が関わっているそうですね。

鈴木 今回の音楽祭は、本当にこの鉄道コンサートを軸に全部を組み立てたといっても過言ではありません。実は、オープニング・コンサートでも、挾間さんの「Take the “A”train」をぱんだウインドオーケストラや市内の学校の吹奏楽部の皆さんと吹奏楽版で演奏します。

上野 さらに、オープニング・コンサートでは、鉄道関連の曲で酒井格さんの「I Love the 207」という作品も演奏します。207とは、JR西日本の207系という車両のことなんです。どんな曲か、お楽しみに!

鈴木 弦楽四重奏の演奏会にも、やはりドヴォルザークの「アメリカ」を入れたりしています。今年のテーマは『Journey Through Music ! 音楽の旅へ!』ですが、調布へちょっと旅をして音楽を聴きに行くというのは素敵なことだと思います。ぜひ、調布国際音楽祭にお越しください!

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 期間中、この他にもバッハ・コレギウム・ジャパンのヘンデル《ロデリンダ》上演、ベルギーの声楽アンサンブル「ヴォクス・ルミニス」の初来日公演、鈴木雅明が振るフェスティバル・オーケストラによるストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」、名手が揃う室内楽など、調布でしか聴けないプログラムが多数用意されている。キッズ公演や街角での無料コンサートも充実。文字通り音楽ファン・鉄道ファンの期待に応える9日間となりそうだ。

衣装協力(市川紗椰さん)【トップス:th△products(TARO△HORIUCHI△Inc.) / ピアス:ブルータウン(ロードス) / アシンメトリーリング、ピンキーリング:mysha(ロードス)/ シルバーリング:c/n(ロードス)】

【Information】
調布国際音楽祭2025
2025.6/21(土)~6/29(日) 調布市グリーンホール、調布市文化会館たづくり、調布市せんがわ劇場、深大寺本堂 他
主な公演
オープニング・コンサート~ビッグバンドガラ! Take the “A” train~
6/22(日)14:00 調布市グリーンホール 大ホール
名手たちが奏でるドヴォルザーク《アメリカ》
6/26(木)13:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
ヴォクス・ルミニス「Bach Dynasty~華麗なるバッハ一族の音楽」
6/26(木)19:00調布市文化会館たづくり くすのきホール
名手たちが奏でるプーランク《ピアノ六重奏曲》
6/27(金)13:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
鉄道×音楽  Take the “Keio” train!
6/28(土)13:00 調布市グリーンホール 大ホール
BCJ ヘンデル:オペラ《ロデリンダ》(演奏会形式)
6/28(土)17:00 調布市文化会館たづくり くすのきホール
鈴木雅明×フェスオケ渾身のペトルーシュカ
6/29(日)16:00 調布市グリーンホール 大ホール
問:チケットCHOFU 042-481-7222