【SACD】ブルックナー:交響曲第8番 /沼尻竜典&神奈川フィル

ワーグナーのオペラなどを手掛けた先で、いよいよ沼尻が独墺系シンフォニストの本丸、ブルックナーに入ってきた。沼尻の指揮は旋律を流麗に造形していくところに美質があるが、この演奏はどっしりと安定したサウンドの上でメロディが美しくしなる。神奈川フィルも献身的に応え、とりわけ弦の肌触りがとても多彩で艶やかだ。適度に低い重心、豊かな量感、自然な加減速、細やかなテクスチュアなどが、第1楽章や第3楽章で深々とした感興をもたらす。一方第2楽章は明るいサウンドで軽やかに進み、フィナーレもダイナミックに運ぶ。ベテランのタクトがいよいよ大家の貫禄を帯びてきた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2026年6月号より)

【information】
SACD『ブルックナー:交響曲第8番/沼尻竜典&神奈川フィル』

ブルックナー:交響曲第8番(ノーヴァク 第2稿 1890年版)

沼尻竜典(指揮)
神奈川フィルハーモニー管弦楽団

収録:2025年10月、横浜みなとみらいホール(ライブ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00918 ¥3850(税込)