アリス=紗良・オット(ピアノ)

さらなる進化をとげるアリスを聴く

©Marie Staggat/DG
©Marie Staggat/DG
 スタイリッシュに、闊達に、自由に。アリス=紗良・オットのピアニストとしての活動は、デビュー以来着実に輝きを増している。昨年はフランチェスコ・トリスターノとのデュオで、バレエ・リュスをテーマとしたアルバム『スキャンダル』をリリースし、世界中に鮮烈な印象を刻み付けたアリスだが、今年のリサイタルのプログラムからは、自身の原点を見つめ、深化させ、さらなる驚きをファンに与えようと目論んでいるかのような、静かな意気込みを感じさせる。
 幕開けに選曲したのはベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」だ。2010年に「ワルトシュタイン」を含むソナタ・アルバムをリリースし、きめ細かく活き活きとしたベートーヴェン解釈を示したアリス。激しさとロマンティシズムに満ちた「テンペスト」には、どんな勢いとドラマを与えるのだろうか。続く作品はJ.S.バッハの「幻想曲とフーガ」だ。意味ありげなアルペジオにいざなわれ、素早く音型が動き続けるフーガを、アリスの芯のある細やかなタッチが技巧的に描き出してくれるだろう。そして同じくバッハによる「シャコンヌ」(ブゾーニ編)へとつなぐ。後半は得意のリストだ。名曲「愛の夢」は第2番と第3番を。そしてパガニーニ大練習曲で締めくくる。第3番「ラ・カンパネラ」はデビューアルバムの最終曲に置いた作品だ。全6曲の流れの中で聴くライヴで、あらためてアリスの成長ぶりを実感できるに違いない。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

5/19(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 
http://www.japanarts.co.jp

他公演
5/11(月) iichiko総合文化センターグランシアタ
5/13(水) いずみホール、5/14(木) 東京文化会館
5/16(土) 所沢市民文化センターミューズ アークホール
5/17(日) 軽井沢大賀ホール
5/20(水) 前橋市民文化会館
5/23(土)びわ湖ホール
5/24(日) 霧島国際音楽ホール みやまコンセール
5/25(月) 佐賀市文化会館
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