佐藤卓史(ピアノ) シューベルトツィクルス 第3回 即興曲

シューベルトの世界に浸る一夜


 昨年の春にスタートした『佐藤卓史シューベルトツィクルス』の第3回が東京文化会館小ホールで開かれる。第1回の「幻想曲」、第2回の「ピアノ・ソナタ I —短調ソナタの世界」に続く今回は「即興曲」がテーマだ。シューベルトはその人生を終える前年の1827年に2つの「即興曲D899、D935」を残した。それぞれ4曲ずつからなる曲集は、ピアニストのリサイタルでも頻繁に演奏されるが、ピアノ愛好家や学習者の間でも、とにかくよく弾かれる人気曲である。多くの人にとって耳馴染みのある作品だけに、佐藤が展開する壮大な「ツィクルス」の流れの中で、あらためてじっくりと耳を傾けることのできる最良の機会だ。
 D899は、続けて演奏すると40分近くを要する大曲。シリアスさや、温もりを感じさせる流麗さなど、1曲ごとのヴァリエーションを佐藤がどう聴かせてくれるか楽しみだ。D935は4楽章からなる1つのソナタとして捉えられることもある。情熱的かつ緻密な佐藤のアプローチが冴えわたる4章となりそうだ。
 このツィクルスは、15年をかけて室内楽も含むシューベルトの全ピアノ作品を網羅しようとする一大プロジェクトの一環。佐藤卓史本人がシリーズに関して綴るブログ「シューベルティアーデ電子版」では、「即興曲の起源」という意欲的な学術的記事も投稿されている。たっぷりと予習してコンサートに出かけるのも面白いかもしれない。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

4/16(木)19:00 東京文化会館(小)
問 アスペン03-5467-0081 http://www.aspen.jp
佐藤卓史 ブログ シューベルティアーデ電子版
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