王子ホール G Lounge #20 波多野睦美、バルバラを歌う

シャンソンの“ことば”を伝える

波多野睦美 ©河野俊之
波多野睦美 ©河野俊之

 古楽からスタートして、現代音楽などでも広くその美しく澄んだ歌声を聴かせている波多野睦美。『波多野睦美、バルバラを歌う』と題したコンサートではフランスのシャンソンに挑む。
 バルバラ(1930〜97)はフランスの伝説的なシャンソン歌手。ユダヤ人の一家に生まれ、ナチ占領下のフランスを転々と逃亡、父親との複雑な関係にも苦しみながら1970〜80年代のシャンソン界に君臨した女王だ。絶筆となった自伝『一台の黒いピアノ…』は日本でも出版されているので、事前に目を通しておくとコンサートがより楽しめるのでは。
 バルバラの歌のほとんどは自身の作詞作曲だ。特にその歌詞の文学的価値は高く評価されていて、歌詞単独で詩歌作品としても出版されているほど。シャンソンはことばがいのち。音楽をジャンルの垣根で分けて考えることが無意味なことをいつも教えてくれる波多野だが、この企画には少し迷いもあったのだとか。しかし、音楽作品はもちろん、最近ではナレーションの分野でもダイレクトに「ことば」と取り組んでいる彼女。バルバラの美しいことばからも、多様な情感を引き出してくれるはず。今回の歌詞は、新たにおこした日本語訳(藤本優子訳)。バンドネオンに北村聡、ピアノ・編曲に山田武彦と腕利きの共演陣を迎え、注目の演出家・田尾下哲が構成・演出を担当しているのも興味津々。聴き手を春の宵の銀座へ誘ってくれる。
文:宮本 明
(ぶらあぼ + Danza inside 2015年4月号から)

4/17(金)19:00 王子ホール
問 王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
http://www.ojihall.jp